2004 Fiscal Year Annual Research Report
ビフェロセン-TCNQ系電荷移動錯体の開発・新しい相転移物性の発現
Project/Area Number |
16038224
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
持田 智行 東邦大学, 理学部, 助教授 (30280580)
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Keywords | ビフェロセン / 電荷移動錯体 / 相転移 / スピンパイエルス転移 / TCNQ / Ni(mut)_2 |
Research Abstract |
本研究では、新しい相転移物性の発現および相制御を目指したビフェロセン系電荷移動錯体の開発を主眼とする。ネオペンチルビフェロセンのF_1TCNQ錯体は、120K付近で一価イオン性-二価イオン性状態間の電荷移動相転移を示すが、本研究により、構成要素の化学修飾による化学的相制御が可能であることが明らかとなった。第一に、F_1TCNQ錯体に任意の割合でTCNQを添加した場合、TCNQの含有率に応じて転移温度が連続的に低下することを見出した。また逆に、F_1TCNQ錯体に対しF_2TCNQを混合することによって、価数転移温度を系統的に上昇させられることがわかった。第二に、ドナーの置換基調節による相転移制御を計画した。マーデルング利得の増加を期待し、メチル基が一個欠損した非対称ビフェロセンを合成した結果、転移温度が19OKへ上昇することが分かった。さらに、TCNQ系との比較を念頭に、同じく平面電子受容体であるNi(mnt)_2を用いた電荷移動錯体の原子価転移について検討した。イソプロピルビフェロセンのNi (mnt)_2錯体において、室温付近および120K付近で遂次電荷秩序化現象が起こっていることを見出した。構造解析より、単位格子に二個の結晶学的に独立なビフェロセンが存在し、それらが順次原子価転移を起こすことが明らかとなった。この物質は、120K付近でスピンパイエルス転移を起こしてNi(mnt)_2が二量化する。こうしてドナー周囲の結晶環境が非対称化して電荷秩序が誘起されることが判明した。すなわち、本系の逐次原子価転移は、Ni (mnt)_2のスピンパイエルス不安定性の帰結と見做せることがわかった。
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