2004 Fiscal Year Annual Research Report
高圧下等環境下の分子性導体の第一原理計算、及びそれに基づく諸物性の理論的予測
Project/Area Number |
16038227
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
宮崎 剛 独立行政法人物質・材料研究機構, 計算材料科学研究センター, 主任研究員 (50354147)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木野 日織 独立行政法人物質・材料研究機構, 計算材料科学研究センター, 主任研究員 (70282605)
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Keywords | 有機伝導体 / 圧力効果 / 第一原理計算 / FLEX近似 / 分子性導体 |
Research Abstract |
本年度は、主にb'-(BEDT-TTF)_2X(X=ICl_2とAuCl_2)の圧力効果に対する超伝導転移などの諸物性に対する理論解析、予測を行った。この二つの物質は、常圧下ではほとんど同じ結晶構造をしていて、ヒュッケル近似にもとづく強結合モデル計算では、常圧下のバンド構造はほとんど同じである。しかし、ICl_2塩が6.5GPa以上で超伝導転移を示すのに対して、AuCl_2塩では9.9GPaの圧力下ですら金属化されない。この圧力効果の違いを明らかにするために、以下のような研究を行った。 1、第一原理計算による上記物質の圧力下の結晶構造とバンド構造の計算 ICl_2塩の12GPa以上、AuCl_2塩の0-20GPaの圧力下の結晶構造、バンド構造を求めた。常圧下では、二つの物質は定性的に非常に似通ったバンド構造であることを確かめた。さらに、圧力による二つの物質の構造変化にも大きな差はないことを第一原理計算によって明らかにした。一方、バンド構造に対する圧力変化には定性的な違いが存在することが分かった。 2、1の結果を再現する強結合モデルのパラメータの導出 上記の第一原理計算で得られた信頼性の高い圧力下のバンド構造を精度良く再現する強結合モデルのパラメータを得ることに成功した。 3、2のモデルに対するFLEX近似にもとづく理論解析 2で得られた強結合モデルを用いて、スピン揺らぎにもとづく理論解析を行い、ICl_2塩の超伝導転移を再現することに成功した。さらに、ICl_2塩とAuCl_2塩の圧力温度相図の違いを明らかにするために、AuCl_2塩の特異なバンド構造を考慮した理論解析を開始した。 4、詳細な構造の解析 1で得られた圧力下の結晶構造に存在するBEDT-TTFダイマーの電子状態を計算することにより、AuCl_2塩の特異な電子状態が、アニオンの違いによって得られる構造の違いから生じる訳ではないことを示した。 上記の他に、一軸性の圧力効果を調べるためのプログラム整備を行った。
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