2004 Fiscal Year Annual Research Report
金属ガラスにおけるき裂先端近傍での降伏と塑性変形挙動
Project/Area Number |
16039205
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉見 享祐 東北大学, 金属材料研究所, 助教授 (80230803)
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Keywords | Zr系金属ガラス / 共焦点顕微鏡 / 微小領域X線回折 / 引張伸び / せん断帯 |
Research Abstract |
本研究では、引張もしくは曲げ破断した金属ガラス中のき裂進展に伴うき裂先端部での塑性歪みを観察し、き裂先端での歪み場、応力場解析を行うことによって金属ガラスの降伏応力を見積もる一方、透過型電子顕微鏡やX線回折法によってき裂先端での構造変化、変形によって導入された欠陥やナノ結晶の調査を行い、金属ガラス中のき裂伝播ならびに塑性変形機構を検討することを目的としている。平成16年度では、近年、室温で巨大な圧縮変形能を示すことが見出されたZr_<65>Al_<7.5>Ni_<10>Pd_<17.5>金属ガラスの室温での引張変形挙動を調査し、破断面および破断部周辺の試料表面の形態を走査型電子顕微鏡、共焦点顕微鏡によって観察するとともに、モノキャピラリー型微小領域X線回折装置で破断面における構造変化を調査した。その結果、Zr_<65>Al_<7.5>Ni_<10>Pd_<17.5>金属ガラスは、室温で0.2%程度の引張伸びを示すことがわかった。破断部周辺では大量のせん断帯(shear band)が観察された。共焦点顕微鏡観察によって、せん断帯をはさんだ両側では大きなもので数ミクロンの高低差があることがわかり、このせん断帯の発生が引張伸びを与えているものと考えられた。破断面では、典型的なvein模様が観察された。しかしこのvein模様の高低差はせいぜい数百ナノメーター程度であり、き裂伝播によって局部的に粘性流動を起こした領域はき裂先端部のごく近傍のみに限定されていることが示唆された。そこで、モノキャピラリー型微小領域X線回折装置によって破断面の構造変化を調査したところ、ハローパターンの半値幅が未変形部に比べて明瞭に減少していた。これを結晶子サイズの変化として計算すると、未変形部がおよそ2nmであるのに対して、破断面は3nm程度となり、き裂伝播によってなんらかのガラス構造変化が起きていることが示唆された。
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