2004 Fiscal Year Annual Research Report
過冷却液体領域における超音波振動下での金属ガラスの相安定性と構造変化
Project/Area Number |
16039212
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
垂水 竜一 大阪大学, 基礎工学研究科, 助手 (30362643)
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Keywords | 金属ガラス / 超音波 / ガラス転移 / 結晶化 / 弾性定数 / 内部摩擦 / 相安定性 / 過冷却液体 |
Research Abstract |
過冷却液体領域における金属ガラスの物性を明らかとすることは、金属ガラスの相安定性を理解する上で必要不可欠である。とりわけその弾性特性は、本質的には構成原子間の結合状態を反映した物性値であることから、ガラス転移現象の物理的特徴、および過冷却液体相の相安定性を理解する上で、きわめて重要な知見をもたらすものと考えられる。そこで本研究では、電磁超音波共鳴法を用いて、Cu基金属ガラスの極低温域〜過冷却液体領域における弾性率・内部摩擦の定量計測を行い、弾性特性という観点からその相安定性の起源に関する知見を得ることを目的とする。今年度は、(i)高真空中での弾性定数計測システムの開発、(ii)ガラス転移点〜結晶化温度近傍における弾性定数の定量計測、(iii)ガラス転移点直下における呼吸振動モード・せん断振動モードの超音波照射と結晶化加速現象の定量評価、という3点を目的として研究を行った。その結果、超音波振動下では結晶化温度の顕著な低下が認められ、また結晶化直前では、弾性定数のC_<11>成分に比べ、C_<44>成分がわずかに減少するという現象を見出した。一方、内部摩擦には結晶化前後においてQ_<11>^<-1>成分に大きなピークが現れることを見出した。この結果は、結晶化時には体積変化に対する変形に対して大きなエネルギーの吸収が生じることを意味している。これらの研究に加えて、極低温域(〜5K)における弾性率・内部摩擦の計測も行った。計測結果をEinsteinの格子モデルに基づいて解析した結果、金属ガラスに共通して認められる極めて小さなC_<44>/C_<11>比は、格子の非調和性に起因した熱振動効果ではなく、非晶質という特有の原子配置に起因したものであることを示唆する結論を得た。現在は、金属ガラス中における原子の結合モデルを考慮中である。
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