2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16041220
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山口 毅 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 助手 (80345917)
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Keywords | モード結合理論 / 水和水 / 液体論 / 疎水性水和 / 一般化ランジェバン方程式 / 回転緩和 |
Research Abstract |
1.疎水性分子であるネオン・キセノン・ベンゼンの有限濃度水溶液の動的物性について、分子性液体のモード結合理論を用いて理論計算を行った。二状態モデルを用いて水和殻内の回転相関時間を計算したところ、水和殻における水の運動性の低下と、回転に対する活性化エネルギーの増加が見られ、更に、この傾向は溶質のサイズと共に顕著になった。一方溶質の運動に関しては、水和殻における溶媒の運動性の低下からの予想とは反して、拡散係数の絶対値は大きくなり、活性化エネルギーは小さくなった。これらの傾向はNMRによる実験と対応しており、疎水基の水溶液中の運動を考える上で、水和水の運動性の低下の影響は特別に考慮する必要がないことを示している。 2.溶質の並進過程に伴う溶媒和構造の応答について、一般化ランジュバン理論を用いて定式化を行い、分子動力学シミュレーションを用いて、水溶液中の一価イオンの拡散に伴う水和構造のダイナミクスを評価した。Li^+やNa^+のような小さなイオンの水和水は、イオン-水間の強い静電相互作用でイオンに束縛されているために、イオンの移動の際に水和水は引力の深い井戸の中で振動的応答を示すことが分かった。このことはまた、小さいイオンの拡散を考える上で、水和水のダイナミクスがバルクの水と同一であるというモード結合理論の近似が成り立たないことを示している。一方、大きいイオン、中性分子の水和構造の応答は、単純液体中の自己拡散に対するものと定性的には同一の挙動を示した。 3.外場の存在下における単純液体の密度場の時間発展について、一般化ランジェバン方程式を基に解析的理論を構築し、固定された溶質の溶媒和ダイナミクスと溶質に働く力の相関関数の計算を行った。溶媒和応答関数・力の相関関数は、短時間、長時間領域共に、分子動力学シミュレーションと良好に一致した。また、密度場の応答に関して、溶質の斥力コアの内部で溶媒の密度場の応答が見られるという、従来のsurrogate理論の欠点を克服することが出来た。しかし、中間の時間領域でのシミュレーションと理論の一致は必ずしも良好ではなく、溶媒和殻内での溶媒の運動に働く摩擦力の扱いを改善する必要があると考えられる。
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