2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16041225
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉川 研一 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80110823)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北畑 裕之 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (20378532)
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Keywords | DNA / 荷電高分子 / 高次構造 / 相転移 / 静電相互作用 / ミクロ相分離 / 折り畳み転移 / キラル選択性 |
Research Abstract |
数十キロ塩基対以上のサイズのDNA分子は、膨潤した状態と折り畳まれた状態との間で、密度差が数万倍に及ぶ不連続な転移(一次相転移)を示す。細胞内の長さにして数cmにもおよぶ巨大DNAのこのような高次構造転移に関する研究は、その一次、二次構造研究に比して著しく立ち遅れている。そこで、単一分子鎖の構造転移に関する実験を更に展開するとともに、水媒質の特異性を取り入れた理論的なモデルを作り上げ、理解することを目的として研究を進めてきた。本年度は、主に、DNAの折り畳み転移が水溶液中のイオン環境にどのように依存しているかについての実験的研究および理論的解析を行い、以下の成果を得た。 1.多価カチオンをDNAの凝縮剤として用いる際、DNAの負の電荷に対して、多価カチオンの幾何学的配置の違いが、凝縮体の安定性に大きな変化をもたらすことを、光学活性な凝縮剤を用いた光学活性依存性の観察、および、電荷密度、立体構造をデザインした2価カチオン(ジアンモニウム(2+))を用い、凝縮転移に与える影響を観察した。その結果、凝縮剤の構造の違いにより、対イオン間の特徴的な相関が変化し、不整合を生じ、それが折り畳み転移の様相を劇的に変化させることを明らかにした。 2.これまでにわれわれは長鎖DNAが単分子レベルでコイル状態から凝縮状態へと不連続に折り畳まれるものであることを明らかにしてきた。本研究では、単一分子内にコイルと凝縮状態が安定に共存するという新奇な状態を見出した。この分子鎖内相分離状態に関して、自由エネルギーをもとにした理論的考察を行い、水溶液中に存在する低分子イオンの並進エントロピー項の寄与が、単一分子鎖内に凝縮状態とコイル状態を安定に共存させる因子となっていることを明らかにした。
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Research Products
(6 results)