2004 Fiscal Year Annual Research Report
新しい一分子計測法による蛋白質の折り畳みダイナミクス
Project/Area Number |
16041228
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高橋 聡 大阪大学, 蛋白質研究所, 助教授 (30283641)
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Keywords | 蛋白質折り畳み / 一分子観察 / 蛍光観察 / シトクロムc |
Research Abstract |
蛋白質の折り畳みダイナミクスを一分子レベルで観察する新しい手法を開発し、シトクロムcなどの折り畳み過程の多様性を解析することが本研究の目的である。本年度は以下の開発と研究を行った。 1)一分子観測システムの完成 一分子観測のためのシステムとして、レーザーとイメージインテンシファイアー、及びCCDカメラによる系を構築した。さらに、一分子観察のためのフローセルとして、試料がセル壁面と相互作用しないための"さや流"システムを製作した。また、レーザー光を変調することでデータに時間マーカーを入れるための光学セクターを導入した。以上の開発により、一分子の蛍光トレースを観測可能になった。 2)シトクロムcの蛍光ラベル 酵母由来のシトクロムcを選び、c末部分に存在するcys102に蛍光ラベルを行った。ラベル化した試料は、ラベル化前の試料とほぼ同じ分光特性を示した。また、分子集団について、平衡変性特性を調べたところ、折り畳み状態(N状態)、変性状態(U状態)の他に、中間状態(I状態)が存在することを確かめた。 3)平衡条件下における折り畳み過程の一分子観測 蛍光ラベルしたシトクロムcを用いて、平衡条件下で折り畳み転移の観察を行った。得られた一分子の蛍光トレースは、様々な強度の間を比較的ゆっくりと行き来した。蛍光強度の頻度分布ヒストグラムを計算したところ、集団変性観察から推定されたN、I、U状態に対応する三つのピークが確認された。これらのピーク分布のグアニジン濃度依存性も、分子集団観察の結果と一致した。従って、今回観察された蛍光強度トレースは、ラベル化試料の特性を正しく反映することが結論できた。このことは、シトクロムcが、分子集団観察では分けることができない副状態の間を行き来することを示唆する。
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