2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16041231
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
月向 邦彦 広島大学, 大学院・理学研究科, 教授 (10023467)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片柳 克夫 広島大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (20291479)
大前 英司 広島大学, 大学院・理学研究科, 助手 (30284152)
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Keywords | 蛋白質 / 圧縮率 / 構造ゆらぎ / 機能発現機構 |
Research Abstract |
蛋白質の立体構造のゆらぎは,構造安定性や機能発現と密接に関わっており,蛋白質物理学の重要な研究課題となっている。しかし,ゆらぎは時空間の現象であり測定手段も限られているため,水中でのゆらぎの定量的評価や構造との関係については不明な点が多く残されている。水溶液中の蛋白質の断熱圧縮率は,分子内キャビティーと水和により決定されており,構造の特異性と体積ゆらぎを敏感に反映する。本研究では,実験・理論両面から構造・圧縮率・機能相関について調べ,以下の成果を得た。 1.大腸菌cAMP受容蛋白質(CRP)のDNA結合に直接関与しない部位でのアミノ酸置換を行い,断熱圧縮率とアミド水素の重水素交換反応を調べた。2分子のcAMPの結合自由エネルギーの差やDMとの結合自由エネルギーは,断熱圧縮率が大きく,また重水素交換しやすい変異体ほど大きくなり,ゆらぎがCRPのアロステリック性とDNA結合能に直接関与していることが分かった。 進化工学的手法により作成した大腸菌ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)の高活性変異体は,野生型より部分比容・圧縮率ともに大きく,分子表面積(水和)の増加をキャビティーの増加が相殺することによりゆらぎが増加したことわ分かった。本酵素の活性は,DHFRの各種変異体の活性-圧縮率相関から予測される値に近く,ゆらぎが酵素機能を高める方向に寄与していることが確認された。 2.蛋白質の断熱圧縮率データベースをもとに,統計解析によりX線結晶構造との相関を調べた。溶媒露出表面積との相関は悪いがキャビティーとは正の相関があり,サイズの大きいキャビティーほど圧縮率を効果的に大きくしていることが分かった。いくつかの球状蛋白質について基準振動解析により等温圧縮率を計算した結果,断熱圧縮率から予測される値に近い値が得られることが分かり,構造から圧縮率を予測できる可能性が示された。
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