2004 Fiscal Year Annual Research Report
イオントラップ中での光解離反応を利用したタンパク質と水分子の相互作用
Project/Area Number |
16041238
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
岩本 賢一 大阪府立大学, 総合科学部, 助手 (00295734)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊田 岐聡 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助手 (80283828)
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Keywords | 質量分析 / イオン分子反応 / 光解離反応 / 生体分子 / イオントラップ / 結合エネルギー |
Research Abstract |
気相中での水和した生体分子イオンの光照射による反応を研究するためにRFイオントラップ/飛行時間型質量分析装置(IT/TOF-MS)を開発した。本装置の特徴を以下に述べる。 ・イオン分子反応の速度定数や熱力学量を測定するためのRFイオントラップを作製した。イオントラップのバッファガスをパルス化(約1ms)することで、トラップ中のイオン分子反応においてバッファガスの影響をなくすことが可能となった。金属イオンと溶媒分子のイオン分子反応における平衡観測から熱力学量の測定を行った。 ・高速粒子衝突イオン源(FABやSIMS)から生成した高速イオンをRFトラップに打ち込む技術を確立した。静電減速レンズを使用することでイオントラップに打ち込む効率を向上させ、強度の弱いイオンを効率よくトラップすることに成功した。 ・イオントラップとリニア飛行時間型質量分析器(TOF)との組み合わせる手法としてポテンシャルリフト法を開発した。これにより、生体分子などの質量数の大きなイオンを効率よくTOFで検出することが可能となる。 本装置の性能を検証するためにAg+-ピロール(1:2)錯体とアンモニア分子との配位子交換反応を観測した。この反応における平衡定数から、Ag+-アンモニアの結合エネルギーを求め、量子化学計算と比較した結果、よい一致を得た。この結果より今回開発したイオントラップ/飛行時間型質量分析装置に熱力学量の測定に十分な性能を有していることが検証された。現時点では未報告であるAg+-ピロール(1:2)錯体の結合エネルギーの測定にも成功した。 今後の展開として、生体分子をイオン化するイオン源(ESI型イオン源)を作製し、本装置と組み合わせる。大阪大学で開発したマルチターン飛行時間型質量分析計とイオントラップと結合し、質量分解能の向上を図り、水和生体分子の光解離反応を研究する。
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