2004 Fiscal Year Annual Research Report
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16041244
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
赤坂 一之 近畿大学, 生物理工学部, 教授 (50025368)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤澤 雅夫 近畿大学, 生物理工学部, 講師 (20258065)
北原 亮 近畿大学, 理研磨研究所, 基礎科学特別研究員
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Keywords | キャビティー計算プログラム / キャビティーの水和 / キャビティーの進化的設計 / ユービキチンの構造揺らぎ / 高圧NMR / 構造揺らぎの可視化 / 加圧下の立体構造解析 / 遅い構造の揺らぎ |
Research Abstract |
1.(水和と構造揺らぎ)一般に球状蛋白質の内部は原子間空隙(キャビティー)を有し、しばしば水の進入が見られる。同一機能をもつ同種蛋白質が、異種生物間でその立体構造内に、水分子出入り可能な程度の大きさのキャビティーが共通した位置に見いだされるかどうかを、さまざまな生物種のリゾチームとシトクロムCを対象に、我々独自のキャビティー検出プログラムを作成して検討し、更に内部に含まれる水との関係を調べた。その結果、リゾチームについては、ほぼすべての生物種において、立体構造内で保存されるキャビティーが存在する。特にドメイン間のヒンジ部分に位置するキャビティーは大きく、通常複数の水分子を含んでいる。この事実は、これらのキャビティーが進化的に設計されたものであり、水和とカップルした構造揺らぎの源泉として、リゾチームの機能にとって重要であることを強く示唆している。 (キャビティー生成揺らぎの直接観測)蛋白質HPrのコア部分におけるチロシン環の遅い(ミリ秒程度の)フリップ運動の速度を、圧力と温度の関数として、定量的な解析に成功した。活性化体積の大きさから、これはキャビティーを生じる、希で比較的大きな構造の揺らぎである。(Hattori et al.,Protein Science.13,3104-3114(2004)) 2.(ユービキチンの水和と大きな構造揺らぎ;揺らぐ蛋白質構造の可視化に成功)揺らぐ蛋白質の「かたち」を、直接実験から原子座標にして表すことは、これまで誰も実現できなかった困難な課題であった。我々は蛋白質の構造揺らぎが体積の揺らぎをもたらすことに注目し、ユービキチンを対象として、常圧下(30気圧)と加圧下(3000気圧)でのNOESY立体構造解析を行い、それぞれの構造を座標化することに初めて成功した。二つの構造は、揺れ動くユービキチン分子の"NMR snapshot"というべきものである。3000気圧では分子のC末端側で大きな構造変化が生じており、水和が著しく進行している。さらにスピン緩和測定の解析から、両構造間の揺らぎは10マイクロ秒程度で起こる遅い揺らぎであることがわかった。実験による、大きく揺らぐ蛋白質構造の可視化の成功は、蛋白質構造が"動的"な実在であることを端的に示す、極めて重要な成果である。(Ryo Kitahara. Shigeyuki Yokoyama and Kazuyuki Akasaka. J.Mol.Biol.347/2 pp.277-285(2005))
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Research Products
(2 results)