2004 Fiscal Year Annual Research Report
アミノ酸配列単純化法を用いた蛋白質のフォールディング・溶解度を定量的に調べる研究
Project/Area Number |
16041247
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
黒田 裕 国立大学法人東京農工大学, 大学院・共生科学技術研究部, 助教授 (10312240)
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Keywords | 蛋白質の折り畳み / 構造安定性 / 熱測定 / 溶解度 / 蛋白質と水 / シミュレーション |
Research Abstract |
研究実績:天然蛋白質の配列は、その立体構造を決定するためという視点からは「雑音」となる様々な情報を含む。そこで我々は以前、仔牛膵臓トリプシン阻害蛋白質(BPTI)の構造及び活性を変えずに、そのフォールドを決定する上では雑音となる、情報の冗長性を除いた単純化アミノ酸配列(以下、単純化法と略)の存在を実験的に示した。「単純化配列」とは、構造安定性への寄与が小さい位置にある残基を全てスペーサー役として用いられるアラニン残基に置き換えた配列を指す。我々は、単純化配列からなる蛋白質の物性を研究することで、アミノ酸配列とその物性との相関が明確に検証できるという考えを基に、理論的及び実験的手法を用いて、タンパク質の構造形成反応・構造安定性及び溶解性の分子機構の研究を進め、以下の成果を得た。 1.配列を単純化した4種類のBPTI変異体の大量発現系と精製法を確立した。また、CDの変性曲線の熱力学解析を行い、van'tHoffの変性エンタルピー(H)、エントロピー(S)、変性温度(Tm)を求めた。その結果、単純化BPTI変異体が2状態変性していることを明らかにした。 2.従来の研究でアラニンスキャニング法を用いて作製されたアラニン置換BPTI変異体の安定性を分子動力学シミュレーション(MD)を用いて調べ、14種類の変異体の計算を終了している。MD計算には、MDGrape-2専用計算機上でAMBER6.0を実行した。平成17年度中には、全43種類のアラニン置換BPTI変異体におけるGibbsの自由エネルギーを計算し、PS.Kimらの実験結果と比較する。 3.22個のアラニンを含むBPTI-22変異体を用い、溶解度を向上させる一般的な方法を開発した。溶解度向上法とは、タンパク質のN末及びC末に3から10残基程度の短い親水性の配列タグを付加する方法である。現在までの研究で、BPTI-22の溶解度を最大で4.8倍向上させている。今後この方法を発展させると同時に、理論モデルから予測される効果との比較を行う。
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