2004 Fiscal Year Annual Research Report
膜リン脂質の非対称性がメンブレントラフィックに果たす役割
Project/Area Number |
16044202
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鎌田 このみ 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助手 (80312354)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 一馬 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 教授 (60188290)
山本 隆晴 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助手 (80312346)
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Keywords | 細胞極性 / 出芽酵母 / メンブレントラフィック / 脂質二重層 / リン脂質 / トランスロケーション / 細胞生物学 |
Research Abstract |
ほとんどの真核細胞の細胞形質膜において、それを構成するリン脂質は二重層の表裏で全く異なる分布を取っていることが知られている。この現象をリン脂質の非対称性と呼び、これまで実験的な証拠は提示されていないが、生体膜一般に見られる現象であると考えられている。しかしながら、リン脂質の非対称性が細胞の生命活動においてどのような意義を持つのかはほとんどわかっていない。私たちのグループは、これまでに出芽酵母において、膜蛋白質Cdc50を同定し、Cdc50がリン脂質を二層間で移動させるアミノリン脂質トランスロケースと複合体を形成してリン脂質の非対称性の制御に深く関与していることを明らかにした。Cdc50はその相同性のある蛋白質が広く真核生物に存在することから、出芽酵母を用いた解析が広く真核細胞に応用できると考えている。そこで、cdc50ファミリー変異株を用いて、リン脂質の非対称性の制御がメンブレントラフィックにおいて果たす役割を明らかにすることを目標に、本研究を行い、本年度は以下に示す結果を得た。 1)出芽酵母のCdc50ファミリー蛋白質である3つの因子の三重変異株(cdc50-ts lem3 crf1)は増殖不能となる。この増殖不能を過剰発現で抑圧する遺伝子としてRabファミリーに属するYPT31とYPT32を得た。 2)電子顕微鏡観察を行ったところ、cdc50-ts lem3 crf1細胞内には正常細胞には見られない異常な膜構造物が蓄積していた。 3)分泌蛋白質インベルターゼのパルス-チェイス実験から、cdc50-ts lem3 crf1細胞でエキソサイトーシスは正常に起こっていることが明らかとなった。 4)cdc50-ts lem3 crf1細胞内で、エンドサイトーシスの初期段階およびその後の液胞への輸送経路は正常であったが、初期エンドソーム-後期ゴルジ体を介して再び細胞形質膜に向かうリサイクリング経路には異常が生じていた。 以上のことからリン脂質の非対称性の制御が、初期エンドソーム-後期ゴルジ体を解するリサイクリング経路において重要な役割を果たしていることが示唆された。
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