Research Abstract |
本研究はシロイヌナズナを用いて,植物細胞における小胞体分子シャペロンの機能解析系を構築し,小胞体品質管理と小胞体機能分化の分子機構とその生理学的意義を明らかにすることを目的とする.このため本年度は,小胞体のhsp70であるBiPのシステムについて,植物細胞を用いた機能解析系の構築を行った.まず,小胞体由来コンパートメント形成のマーカーとなるGFP融合タンパク質として,2Sアルブミンや12Sグロブリン等の貯蔵タンパク質とGFPとの融合タンパク質を作製し,シロイヌナズナ培養細胞での発現系を構築した.これに優性欠損変異を導入したシロイヌナズナBiP1遺伝子を共発現することによって,小胞体内でタンパク質凝集が誘導されることを示唆する結果を得た.同時に,BiPのパートナータンパク質として機能する,小胞体のJドメインタンパク質についての解析も行った.出芽酵母小胞体のJドメインタンパク質である,Jem1p, Scj1p, Sec63pのシロイヌナズナホモログを同定し,GFP融合タンパク質を用いた解析から,これらがシロイヌナズナの小胞体に局在することを示唆する結果を得るとともに,これらの遺伝子発現が小胞体ストレスで誘導されることを示した.さらに,これらホモログの遺伝子破壊株の作製を行ったところ,Jem1pとScj1pのシロイヌナズナホモログの破壊は致死とはならず,これら遺伝子の機能はシロイヌナズナの生育に必要ではないことが示された.一方,シロイヌナズナの2つのSec63pホモログのうち,一方の遺伝子破壊は致死とはならなかったが,もう一方の遺伝子破壊株を得ることはできなかった.
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