2004 Fiscal Year Annual Research Report
カエル卵母細胞の無細胞系を用いた体細胞初期化の解析システム
Project/Area Number |
16045204
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大隅 圭太 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 助教授 (20221822)
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Keywords | 細胞核 / 初期化 / カエル卵母細胞 / 無細胞系 / 赤血球核 / ゲノム / DNA複製 |
Research Abstract |
除核した成熟卵に体細胞核を移植することによってクローン動物が作出されることは、分化した細胞の核が卵内で全能性を回復しうる、つまり初期化されうることを示す。本研究は、成熟期のアフリカツメガエル卵母細胞から調製した細胞質抽出液を用いて赤血球核の初期化をもたらすリモデリングを誘起し、その制御因子を解明することを目的とする。体細胞核の初期化の有無は、それを移植した除核卵の胚発生の有無よって最終的には確認されるが、まずは移植後の最初の体細胞分裂周期においてゲノムDNAが正常に複製されなければならない。正常なDNA複製の有無は分裂期における正常に凝縮した染色体の形成の有無によって知ることができる。そこで私達は成熟期の卵母細胞(減数第一分裂中期)と成熟卵(減数第二分裂中期)から調製した細胞質抽出液中で赤血球核(細胞膜を透過処理した赤血球)をインキュベートし、引き続いて受精卵の細胞周期を再現する卵抽出液(賦活卵抽出液)に移して、核形成およびDNA複製の有無および分裂期における染色体形成の有無を調べた。対照として、卵抽出液の前処理をせずに賦活卵抽出液中でインキュベートした赤血球核についても同様の観察を行った。その結果、前処理せずに賦活卵抽出液に加えた赤血球核は、凝縮した形態を維持し、DNA複製、分裂期の染色体形成が全く見られなかった。それに対して成熟卵の抽出液で前処理したものは、その一部が賦活卵抽出液中でよく成長した核を形成してDNA複製を行った。しかし、分裂期に核膜が崩壊しクロマチンが凝縮したが染色体は形成されなかった。一方、卵母細胞抽出液で前処理したものは、一部がよく成長した核を形成してDNA複製を行い、さらに、分裂期には正常な染色体を形成した。この赤血球核の一連の形態変化は、賦活卵抽出液における精子クロマチンの形態変化に比肩しうるものである。これらの結果は、赤血球核のリモデリングを誘起する能力において、成熟卵より卵母細胞の方が優れていることを支持するものといえる。
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