2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16046207
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
千田 大 東京大学, 医科学研究所, 助手 (90312842)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩倉 洋一郎 東京大学, 医科学研究所, 教授 (10089120)
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Keywords | 脂肪細胞 / 炎症 / インスリン / サイトカイン / 肥満 |
Research Abstract |
炎症性サイトカインは、炎症のメディエーターとして知られていると同時に、神経・免疫・内分泌系に対して様々な作用を及ぼすことが知られている。最近のWeisbergらの研究から、肥満に伴って、脂肪組織において、弱い慢性、炎症が引き起こされ、肥満の脂肪組織にマクロファージの浸潤が起こっていることが報告されている。また、Meier, C.Aらの研究から、IL-1 receptorアンタゴニスト(IL-1Ra)の血中レベルが、肥満患者で上昇しており、IL-1Ra遺伝子が、脂肪組織において発現していることが示されているので、IL-1Raは、肥満や代謝を制御するアディポサイトカインのひとつであると捉えることが出来る。我々は、これまでに、IL-1Ra欠損マウスが痩せており、血中インスリンレベルが低下していることを報告した(1).本研究において、我々は、IL-1システムの肥満、代謝における役割を検討することを目的として研究を行っている。 サイトカインネットワークを介した肥満制御 IL-1Ra欠損マウスにおけるIL-1の過剰シグナルが痩せを引き起こすサイトカインネットワークを解析した。他のグループの研究から、IL-6欠損マウスが肥満を引き起こすことが報告されており、IL-1は、様々な細胞種においてIL-6を強く誘導することが報告されているので、IL-1とIL-6の関係、IL-1の体重制御及びグルコース代謝における役割が、IL-1の下流でIL-6が関与している可能性を検討した。そのために、IL-6、IL-1Raダブル欠損マウスを作成した。IL-6/IL-1Raダブル欠損マウスは、IL-6欠損マウスと比べて有意に痩せており、白色脂肪組織が減少し、インスリン感受性が良くなっており、血中インスリンレベルが低下していた。これらの結果から、IL-1Ra欠損マウスで見られる痩せは、IL-6に依存しないことが明らかになった。また、IL-6、IL-1ダブル欠損マウスを作成し、肥満に対する影響を検討した。IL-6/IL-1ダブル欠損マウスは、野生型マウス、IL-6欠損マウス、IL-1欠損マウスと比べて若い週齢から有意に肥えており、白色脂肪組織が増加していた。これらの結果から、IL-1とIL-6の欠損は、相乗的に肥満を引き起こすことが明らかになった(Chida et al.2006 Diabetes in press.)。 肥満に伴う炎症性変化におけるIL-1システムの役割 肥満におけるIL-1システムの役割を検討するため、IL-1欠損マウスに高脂肪食を負荷し、糖尿病発症に対する影響を検討した。IL-1欠損マウスでは、肥満に伴って起るインスリン抵抗性が抑制されていることが明らかになった。白色脂肪細胞における遺伝子発現パターンの解析から、インスリン抵抗性に関与することが知られているTNF-aやMCP-1の発現上昇が抑制されており、脂肪細胞における炎症が抑制されていることが示唆された。このことから、肥満に伴って脂肪細胞で誘導されるIL-1Raは、肥満に伴う炎症によって誘導される炎症に対して抑制的に働き、善玉のサイトカインとして働いている可能性が示唆された。 IL-1Ra KOマウスの脂肪細胞の解析 我々は、これまでに、通常食条件下でのIL-1Ra欠損マウスにおけるエネルギー産生を解析したが、野生型マウスとの差は見出せなかった。IL-1Ra KOマウスは、高脂肪食に対して抵抗性で、太らず、血糖値やインスリンレベルも正常である。この条件下で、改めてエネルギー産生を解析したところ、高脂肪食負荷によって、肥満した野生型マウスと比べて、エネルギー産生が昂進し、RERが低下していることを見出し、脂肪酸酸化が昂進している可能性が示唆された。さらに、内臓脂肪では、顕著な差が見られなかったが、皮下白色脂肪細胞の肥大化が抑制されていることが明らかになった。これらのことから、IL-1Ra KOマウスは、脂肪細胞における脂肪酸酸化が促進されていることが痩せの一つの原因となっている可能性が示唆された。
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Research Products
(2 results)