2004 Fiscal Year Annual Research Report
脂肪細胞におけるインスリン感受性獲得の分子機構と肥大化誘導分子の同定
Project/Area Number |
16046211
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
前川 聡 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (00209363)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江川 克哉 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (10335169)
卯木 智 滋賀医科大学, 医学部, 医員
前田 士郎 理化学研究所, 遺伝子多型研究センター, チームリーダー (50314159)
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Keywords | PP2C / PP2A / Small T antigen / 脂肪分化 / PI3キナーゼ / Akt |
Research Abstract |
前脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化に伴い3T3L1細胞はインスリン感受性を獲得する。その際、インスリン情報伝達に重要と考えられるインスリン受容体やインスリン受容体基質(IRS-1)の蛋白発現が増加し、さらにエフェクター蛋白である糖輸送担体(GLUT4)発現も増加する。インスリン情報伝達において、シグナル蛋白のリン酸化調節は重要であり、インスリン受容体やIRS-1のチロシン残基のリン酸化は、チロシンホスファターゼにより調節され、一方、PI3キナーゼの下流のAktキナーゼやatypical PKCのセリン・スレオニン残基のリン酸化はセリン・スレオニンホスファターゼにより制御されている。しかしながら、インスリン情報伝達におけるセリン・スレオニンホスファターゼの役割についての検討は少ない。我々は、3T3L1脂肪細胞の分化に伴って、セリン・スレオニンホスファターゼPP2Cの発現が増加し、一方PP2Aの発現が減少すること、アデノウイルスベクターを用いて3T3L1脂肪細胞にPP2Cを過剰発現させると、PI3キナーゼを直接活性化しインスリン感受性を増強して糖輸送活性を亢進させることを見出した。 一方、SV40 small T antigenを3T3L1脂肪細胞に過剰発現させ、PP2A活性を抑制すると、Aktキナーゼのリン酸化増強を介して糖輸送活性が亢進することを見出した。すなわち、脂肪細胞においてPP2C活性化はインスリン感受性の増強を、PP2A活性化はインスリン抵抗性を誘導することが判明し、成熟脂肪細胞への分化に伴うセリン・スレオニンホスファターゼの活性変化は、インスリン感受性獲得に重要な役割を果たしていることが示唆された。 前脂肪細胞から分化しインスリン感受性を獲得した成熟脂肪細胞は、糖輸送活性が増加し肥大化へと向かう。肥大化した脂肪細胞はインスリン抵抗性を誘導するアディポサイトカインを分泌し、メタボリックシンドロームの病態を形成すると考えられている。
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