2004 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトES細胞からの脂肪血管前駆細胞の同定と脂肪細胞機能異常の発生細胞学的解析
Project/Area Number |
16046212
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 裕 京都大学, 医学研究科, 助教授 (40252457)
|
Keywords | ES細胞 / 前駆細胞 / 発生分化 / 形質変換 |
Research Abstract |
脂肪細胞の肥大増殖に伴う形質転換は、メタボリックシンドロームの成因、病態において中心的意義を有するが、そのプロセスの理解において脂肪細胞の起源発生分化の正確な把握が不可欠である。無限の増殖能とほとんどすべての臓器細胞に分化し得る全能性を有するES細胞は、細胞分化解析の好適のマテリアルである。我々は、VEGF受容体の一つであるFlk1陽性細胞を純化し、Flk1陽性細胞が血管前駆細胞(ES cell-derived vascular progenitor cells ; ES-VPC)であることを発見した。更に我々は、日本初のヒトES細胞を用いた研究を開始した。本研究課題はヒトES細胞由来間葉系前駆細胞、更に脂肪血管前駆細胞を同定し、脂肪細胞の発生分化をin vitroで単一細胞レベルでトレースし脂肪細胞分化因子を網羅的に探索するとともに、その成果をメタボリックシンドロームの成因解明及び脂肪細胞機能是正治療法への応用を目指すものである。本年度は、ES細胞由来の脂肪血管前駆細胞の同定を試み、以下の研究成果を得た。 未分化マウスES細胞をコラーゲンIVディッシュもしくはOP9ストローマ細胞上で分化させ、Flk1陽性細胞を純化した。得られたFlk1陽性細胞を用いて、5μg/mlインスリン、0.5μMデキサメサゾン、50μMインドメサシン、0.5mM IBMX、1μMピオグリタゾンを添加した脂肪細胞分化誘導培地で14日間培養を行い脂肪滴の出現を評価した。その結果、脂肪の蓄積を認める細胞を認めたもののその数は少数であった。一方、Flk1陽性細胞を血清存在下で3日間培養し血管平滑筋へと分化させた後に、PPARγアゴニストである1μMピオグリタゾン、PPARδアゴニストである50nM GW501516を添加し、血管平滑筋細胞の形質変換を検討したところ、血管平滑筋細胞のα平滑筋アクチン染色性は減弱し、脂肪を蓄積する前脂肪細胞の分化が認められた。以上より、マウスES細胞VPC由来の血管平滑筋においてPPARδ、PPARγの活性化により脂肪蓄積が促進されることから、血管平滑筋細胞においてもPPARfamilyの転写調節により脂肪細胞への分化誘導の可能性が示された。
|