2004 Fiscal Year Annual Research Report
光学的広域神経活動計測法を用いたグリア細胞による海馬神経回路網の活動調節の研究
Project/Area Number |
16047201
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
飯島 敏夫 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 教授 (90333830)
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Keywords | 神経科学 / 生理学 / 脳・神経 / 細胞・組織 |
Research Abstract |
実質的に神経回路に組み込まれているグリア細胞が、いかに神経回路全体の機能を制御しているかを理解することが脳・神経機能を理解する上で、今、非常に重要と考えられる。本研究ではこの観点から、解剖学的構造が明瞭で、かつシナプスや神経回路の生理学的研究知見の豊富な海馬の神経回路を対象として、グリア細胞による神経回路の機能調節の実体を調べた。 嗅内皮質から貫通枝を介して海馬に入力する感覚情報は、海馬の主要神経回路で歯状回、CA3、CA1のニューロンに順次伝達・処理され、最終的に海馬台ニューロンを介して連合野に出力される。本研究では歯状回シナプス、CA3シナプス、CA1シナプス(さらに海馬台シナプス)の単一、または複数個所でアストロサイトが機能修飾を受けた時、その結果が回路の最終出力、すなわち海馬台ニューロンの出力にどのように反映されるかを光学的広域神経活動計測法を用いて研究した。以下に結果を要約する。 1)歯状回→CA3→CA1→海馬台と連結する海馬内主要神経回路全体にGlt-1 transporter阻害剤を効果させると神経回路出力は消失した。 2)各シナプスにおけるGlt-1 transporter阻害剤の影響を調べると、貫通枝日歯状回顆粒細胞シナプス、および苔状繊維-CA3シナプスではシナプス伝達が100%阻害されたが、シャーファー側枝-CA1シナプスでは約65%の阻害であり、部位差が認められた。 3)ATP分解酵素は歯状回→CA3→CA1→海馬台と接続する神経回路全体に投与すると歯状回、CA3、CA1の活動を部分抑制し、その結果、海馬台の出力は完全に消失した。すなわち、部分抑制の結果として回路の全体出力を消失させた。 4)ATPリセプターアンタゴニストは回路全体の出力を不可逆的に半減させた。 5)グリア機能修飾による海馬内神経回路のシナプス伝達の部位差の起源を明らかにすることなどが今後の重要課題である。
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