Research Abstract |
シナプスを取り巻くアストロサイトから分泌される因子によってシナプスの形成と機能が修飾されると報告されている.我々は,シナプス後部タンパク質,LRP4,をコードする完全長遺伝子をクローニングした.LRP4はLDL receptor familyのメンバーであり,シナプス後部にターゲットすると考えられた.LDL receptor familyのメンバーの機能として一般に,コレステロールの代謝,その他のリガンドの受容と取り込み,およびそれに伴う細胞内へのシグナル伝達である.我々は,LRP4がグリアからの放出因子のシナプス後部側の受容体で,グリア-シナプス相関の重要な担い手の一つでははないかと考えて研究を行った. (1)以前作成した抗C末抗体は,主要なPSDタンパク質,synGAP,とクロスリアクトするという重大欠陥が判明した。そこで新たに全く新規に2種の抗LRP4抗体を作成した(1.細胞外ドメインのリガンド結合部位と推定される部位,2.cytosolio C末部分をそれぞれエピトープとした).それにより,内在性LRP4を同定し,細胞内局在(細胞下分画法,培養神経細胞の細胞染色)を明らかにした。 (2)上記の抗体を用いて,神経系培養細胞の細胞染色を行ったところ,LRP4は培養初期から発現していること,成熟神経細胞の他,神経系の未分化細胞にも発現していることが明らかになった。 (3)初代神経細胞培養系にグリア細胞のconditioned medium (GCM)を添加することにより,神経細胞の分化,シナプス形成が促進された。GCMによりグリア系細胞の増殖が増幅されることが寄与している機構が示唆された. (4)抗LR抗体(リガンド結合領域に対する抗体)を培養神経細胞に投与することにより,神経細胞の形態,特にシナプスの脱落が惹起された。培養神経細胞にコレステロール合成阻害剤を投与すると,同様な減少が引き起こされること,また,その細胞に外部からコレステロールを投与することにより,シナプス脱落が部分的ではあるが,解消されることから,上記抗LR抗体の作用は,抗LR抗体が,グリアからのコレステロール供給をブロックするために起きる可能性が考えられた。 (5)LRP4のApoE結合能を調べたが,ポジティブな結果は得られなかった。おそらく,量的な問題および方法論的な問題によるものと考えられた。これらの問題を解決した上で再検討を要する。 (6)ノックアウトマウスの作成の為のターゲッティングベクターはほぼ完成まで近づいた.
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