2004 Fiscal Year Annual Research Report
神経発生及び再生における幹細胞の可視化とニューロン・グリア産生機構の解明
Project/Area Number |
16047219
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大塚 俊之 京都大学, ウイルス研究所, 助教授 (20324709)
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Keywords | 発生・分化 / 脳・神経 / 神経科学 / 再生医学 |
Research Abstract |
転写因子Hesのプロモーターを用いて神経幹細胞の可視化と選別を試みた。Hes1およびHes5プロモーター下に半減期の短い不安定なGFP(d2EGFP)を発現するベクターを用いてトランスジェニックマウス(pHes1-d2EGFP,pHes5-d2EGFP)を作成した。 GFPは胎生早期において神経管の脳室周囲帯に限局した発現パターンを示し、ニューロンには発現しておらず、radial gliaを含む増殖能を持った未分化な細胞に発現していた。胎生11日目の脳からFACSで分離したGFP陽性細胞群と陰性細胞群におけるneurosphere形成能を比較したところ、GFP陽性群からのみ高率にneurosphereが形成された。分散培養したGFP陽性細胞のTime-lapse観察においては、片方の娘細胞がニューロンに分化し、もう片方がGFP陽性にとどまる非対称分裂を認め、一部のGFP陽性細胞は更に2-3回GFP陽性細胞を産み出す自己複製を示した。また、Numb陽性の娘細胞はGFPの発現が弱く、逆にGFP陽性の娘細胞はNumb陰性であり、Numbの分配の少ない娘細胞ではNotch-Hesシグナルが維持されて幹細胞としてとどまるというストーリーによく合致する結果が得られた。以上の結果から、pHes-d2EGFPの発現が神経幹細胞を可視化するマーカーとなり得ること、FACSにより幹細胞を選別し回収できる可能性が示された。 更に、pHes5-d2EGFPの背側終脳においては胎生後期から生後にかけて、オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)に特異的なGFPの発現を認め、FACSによりOPCの回収が可能であった。 これらのGFP陽性細胞を回収し、各発生段階特異的に発現する遺伝子の網羅的解析から、ニューロン産生からグリア産生への移行に関わる因子、グリアへの分化を制御する因子の解明が進むと考えられる。
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