2004 Fiscal Year Annual Research Report
グリア細胞系譜の多様性の解析-回路網に特異的なグリア細胞サブクラスは存在するか
Project/Area Number |
16047223
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
鹿川 哲史 熊本大学, 発生医学研究センター, 助教授 (50270484)
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Keywords | グリア細胞 / 細胞運命 / アストロサイト / オリコデンドロサイト / bFGF / 神経上皮細胞 |
Research Abstract |
グリア細胞の機能は非常に多彩であり、それぞれの機能に特殊化した細胞集団の総称である。しかし、グリア細胞のサブクラスが、いつどの様なメカニズムで分かれるのかは明らかにされていない。私は、神経上皮細胞が神経分化やグリア分化に先立って領域化されることに着目し、神経細胞だけでなくグリア細胞にも領域特異的な機能の違いがあるのではないかと仮説を立てた。今回は、大脳腹側の脳室下層に特異的なDlx5/6遺伝子を発現する細胞の系譜を追跡し、娘細胞の細胞分化や脳内分布を調べた。すなわち、子宮内エレクトロポレーション法を用いて、Dlx5/6遺伝子プロモーター下流にCre遺伝子を連結したプラスミドを胎生13または14日のROSA(Cre-loxP)レポーターマウスに導入し、生後13日目にGFPで標識された細胞の分布を調べた。GFP陽性細胞の多くは背側の大脳皮質に検出され、オリゴデンドロサイト前駆細胞やアストロサイトに分化した。すなわち、大脳皮質(背側)には腹側の大脳基底核原基付近に由来するグリア細胞が多数存在することが示唆された。 同様の子宮内エレクトロポレーション法によって、我々は大脳オリゴデンドロサイト前駆細胞が大脳腹側の神経上皮細胞より特異的に発生することを示してきたが、培養では背側の大脳皮質神経上皮細胞からもオリゴデンドロサイトが分化することが知られており、矛盾していた。今回、我々は、神経幹細胞や神経上皮細胞の培養に一般に添加されているbFGFが、Olig2転写因子遺伝子の発現を誘導し大脳皮質神経上皮細胞にオリゴデンドロサイトへの分化能を獲得させることを見いだした。bFGFシグナリングはOlig2以外にも腹側特異的なMash1の発現を誘導し、背側特異的なEmx, Ngn, Pax6の発現を抑制したことから、神経上皮細胞の腹側化を誘導しグリア細胞の細胞運命を転換したことが考察された。
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