2005 Fiscal Year Annual Research Report
グリア細胞系譜の多様性の解析-回路網に特異的なグリア細胞サブクラスは存在するか
Project/Area Number |
16047223
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
鹿川 哲史 熊本大学, 発生医学研究センター, 助教授 (50270484)
|
Keywords | 細胞分化 / 神経上皮細胞 / bFGF / GSK3β / βカテニン / サイクリンD1 / アストロサイト / STAT3 |
Research Abstract |
ニューロンとグリア細胞の共通の前駆細胞である神経上皮細胞は、細胞外来性因子によって様々に領域化されている。私は、「グリア細胞は由来領域によって機能の違いがあるのではないか」と仮説を立て研究を進めている。昨年の班会議では、神経上皮細胞の腹側領域特異性の獲得、及びグリア細胞系譜特異的に分化運命転換を引き起こす因子として新たにbFGFを報告した。本年は、bFGF刺激で活性化される神経上皮細胞内シグナル経路を報告する。bFGFは神経上皮細胞の増殖促進に機能することが経験的に知られており、neurosphere形成にも必須の添加因子として用いられるが、その細胞内シグナル経路はよく分かっていない。今回の解析から、bFGF刺激を受けた神経上皮細胞ではPI3キナーゼからAktに伝搬するシグナル経路が活性化され、Wntシグナリングと共通標的分子であるGSK3が不活化されることが明らかとなった。GSK3の不活化は細胞内カテニンを蓄積させ、TCFファミリー転写因子を活性化して細胞周期チェックポイントに働くサイクリンD1遺伝子の発現を促進した。この経路を阻害すると細胞増殖が抑制された。また、サイクリンD1の強制発現はGFAP陽性アストロサイトの分化を抑制するごとを見出した。この作用はCDK4非依存的すなわち細胞周期調節とは異なるメカニズムであり、サイクリンD1はアストロサイト分化に必須なSTAT3の活性を負に調節していることが予想された。
|