Research Abstract |
本研究では,まずジエンモノマーの固相重合の反応速度と機構について,モノマーと相当するポリマーの単結晶構造を直接比較し,モノマー結晶中でカラム状に分子が配列する際のスタッキング距離が重合速度を決定していることを明らかにした。カラム状に積み重なったモノマー分子のスタッキング距離に応じて,結晶は重合の進行とともに収縮あるいは膨張し,重合反応速度はスタッキング距離の絶対値に依存するため,重合の前後での結晶格子変化が小さいほど重合速度は大きくなった。トポケミカル重合では,結晶格子支配下で成長反応が進行し繰り返し構造の立体中心が高度に構造制御された立体規則性ポリマーが得られる。固相重合で得られたポリマーの多くはメゾジイソタクチックトランス-2,5-構造を持つ立体規則性ポリマーであるが,結晶中に形成されるモノマーの交互型スタッキングによりジシンジオタクチックポリマーが得られる。モノマーの置換基の対称性と結晶中でのモノマーのスタッキング様式の両方を組みあわせて,従来のメゾジイソタクチックポリマーとラセモジシンジオタクチックポリマーを含めた理論上可能な4種類の立体構造すべてを作り分けることに成功し,異なる立体規則性をもつエステル誘導体ポリマーの結晶化挙動を明らかにした。トポケミカル重合によって得られる高分子結晶は非晶部を含まないため,低分子化合物の結晶と同様,結晶相転移現象が明確に観察できる。ポリムコン酸4-ブロモベンジルエステルの高分子結晶を加熱すると,二段階の結晶相転移を起こすことを見いだした。単結晶ならびに粉末X線回折,DSC, IRスペクトルなどの温度変化を詳細に検討し,主鎖方向の構造変化は小さく,側鎖エステル基のコンフォメーション変化によると考えられ,250℃まで加熱してもこの高分子結晶は結晶状態を保って安定に存在することを明らかにした。
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