| Research Abstract |
本研究課題では,結晶反応場の特異性を利用して,1,3-ジエンおよびジアセチレン結晶のトポケミカル重合反応,それら重合によって得られる高分子結晶をホストとして用いる有機インターカレーション,ムコン酸誘導体のEZ光異性化反応や光二量化反応,さらに高分子結晶相転移に伴う極微領域での構造や物性の変化を追跡し,有機結晶相における分子ダイナミクスならびに固相反応機構の詳細を明らかにした.
まず,固相反応の機構解析に向けて,ムコン酸エステルの固相重合反応中の結晶構造の変化を連続的に追跡し,結晶格子の伸縮挙動や歪みをX線回折や分光分析により定量化し,均一系ならびに不均一系重合反応モデルを提案した.反応初期に結晶が一時的に膨張することを直接観察し,反応の誘導期や結晶構造変化に及ぼす歪みの影響を明らかにした.続いて,EZ光異性化反応や[2+2]光二量化反応における構造変化と反応解析を行い,反応過程における単結晶の構造変化の直接観察から反応機構の詳細を明らかにした.また,ムコン酸誘導体モノマーの分子配列制御により,4種類の立体規則性ポリマーを合成し,ポリマーの結晶化に及ぼす影響を明らかにすると同時に,これら立体規則性ポリマー中でのゲスト分子の配向制御の機構を明らかにした.インターカレーションによる有機高分子結晶/銀微粒子ナノコンポジットの作製ならびに新たに開発したダブルインターカレーション法による蛍光分子の層状高分子結晶内への取り込みと結晶固体中での特異的な発光挙動の確認も行った.さらに,ジエンモノマーの固相重合の研究で得た成果を応用して,有機溶媒に可溶なポリジアセチレンを合成設計し,固体,溶液,ポリマーマトリクス中で外部環境に応じてサーモクロミズムを示す新規ポリジアセチレンを見出した.
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