2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16073210
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
松本 隆司 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教授 (70212222)
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Keywords | 軸不斉 / ビフェニル / 合成素子 / アルカロイド / 酵素 |
Research Abstract |
ビフェニル化合物が,各々の芳香環のオルト位にそれぞれ1つだけの置換基を持つ場合,この化合物は潜在的には軸不斉を持つことになる。ただし,多くの場合,アトロプ異性体間の相互変換のバリアーは低く,各異性体を室温で安定に分離することはできない。しかし,各アトロプ異性体がその反応において高い立体選択性を示す可能性は十分に期待でき,仮に,異性体の内の一方が優先的に反応を起こすのであれば,アトロプ異性体の混合物から高い立体選択性での化学変換が可能になる。 そこで,ビフェニル化合物の立体選択的変換手法の開発の一環として,速い平衡下にあるアトロプ異性体の一方を優先的に反応させ,その異性体が示す高い立体選択性を具現化させることを試み,良好な結果を得た。すなわち,側鎖に不斉中心を持つ二置換ビフェニルの一方の芳香環をオルト-キノンアセタールへと変換し,同じ側鎖状にある窒素官能基を付加させることを試みた結果,きわめて高い立体選択性の発現が可能であることが分った。これは,窒素原子を含むスピロ型不斉中心を持つ四環性化合物を立体選択的に合成する手法となり得る。実際に,これを応用することにより,erythrinitol, O-methylerysodienoneという2つのエリスリナアルカロイドの不斉合成を達成した。 また,キラル素子として有用性の高い光学活性ビフェニルの合成に関連して,酵素触媒によるエナンチオ選択的非対称化にさらに検討を加えた結果,従来は良い結果の得られていなかった,オルト位に4つの置換基を光学活性ビフェニルの合成も可能であることが分かり,その適用範囲について検討を行った。
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