2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16073210
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
松本 隆司 東京工業大学, 大学院理工学研究科, 助教授 (70212222)
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Keywords | キラル合成素子 / 軸不斉化合物 / 軸不斉ビフェニル / 生理活性天然物合成 / 酸素触媒 / エナンチオ選択的反応 / 非対称化反応 / エリスリナアルカロイド |
Research Abstract |
合成法の確立された光学活性化合物を合成素子として用いるアプローチは,天然有機化合物の不斉合成において重要な位置を占める。本研究では,新しいタイプのキラル合成素子として軸性不斉化合物に着目し,これらを活用する合成方法論を開発している。本年度の主な成果は以下の通りである。 (1)4つのオルト置換基をもつ軸不斉ビフェニルはキラル素子として高い有用性をもつと期待されるが,その合成は軸不斉ビフェニルの中でも特に難しい。本研究ではこれまでに、酵素触媒によるエナンチオ選択的非対称化反応がオルト四置換軸不斉ビフェニルを合成するための優れた手法となることを明らかにしてきた。 本年度の研究では,天然物合成への展開を念頭に置き,この手法によって得られる軸不斉ビフェニルの化学変換について検討した。その結果,鏡像体過剰率を損なうことなく,それらを種々の有用なキラル素子へと効率的に変換する手法を開発することに成功した。また,実際に,軸不斉ビアリール型構造を含む天然物の全合成に向けて検討を開始した。 (2)エリスリナアルカロイドは,ヒドロインドール環とテトラヒドロイソキノリン環がスピロ型不斉中心を共有して縮環した特徴的な四環骨格をもつ。古くから合成化学の標的化合物とされてきたが,不斉合成の例はきわめて限られている。これまでの研究では,ビフェニル化合物の脱芳香化反応を基盤として,エリスリナアルカロイドの骨格を立体選択的に構築するための2つのアプローチを開発してきた。 本年度の研究では,これまでに合成例のない,C11位が酸素官能基化されたエリスリナアルカロイドの合成に焦点を絞り検討を進めた。その結果,11-ヒドロキシエリスラチジンンの初の不斉全合成に成功し,上記方法論の有用性を示すことができた。
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Research Products
(2 results)