Research Abstract |
アンフォテリシンB(AmB)は,重要な抗真菌剤として感染症治療に広く使われており,生体膜中でイオン透過性を持つチャネル複合体を形成して活性を発現すると考えられているが,詳細な構造は不明である。我々は,AmBによって形成されるチャネル複合体の構造を明らかにするために,膜系の測定に有効な固体MNR,すなわち,異種核間距離測定法の一つである^<13>C{^<19>F}REDOR法を適用することを計画し,一方を^<19>Fで他方を^<13>Cで標識化したAmBを用い,炭素原子とフッ素原子間の距離を測定することにした。C1-C21セグメントは,天然物からオゾン分解,高井オレフィン化等を経て調製し,C22-C37セグメントは,ヨードオレフィンとビニルスズのStilleカップリング,続くホスホネートとのHorner-Emmons反応により合成した。両セグメントのStilleカップリング,マクコラクトン化,および脱保護を行い28-^<19>F-AmBの合成に成功した。同様の手法により25-^<13>C-AmBの合成にも成功した。これらの標識体を用いた固体NMRを開始した。 渦鞭毛藻が生産する梯子状ポリエーテル天然物は,強力な神経毒性や細胞毒性など多岐にわたる生理活性を示す。その特異な構造に由来する生体分子(膜蛋白質など)との分子認識機構に興味が持たれるが,天然から極微量しか得られないため詳細な研究は滞っている。我々は,天然物の特徴を備えつつ,より合成が容易なモデル分子を用いることで梯子状ポリエーテルの機能解析を行うことを計画した。6,7員環エーテルと角間メチル基からなる四環性,七環性,十環性人工モデル分子は,我々が開発したα-シアノエーテルを経由する二環構築型収束的合成法を用いて合成した。蛋白質(グリコホリンAや他の膜貫通型蛋白質)の脱会合活性を指標とした相互作用解析を開始した。
|