Research Abstract |
平成16年度は,当研究室で保有している植物ライブラリーおよび約250種のサポニン,約400種のジアリルヘプタノイド,フラボノイド,スチルベン,クマリンやアルカロイドなどの化合物およびそれらの誘導体の中から,有望な植物や物質をピックアップすることを目標に,膵リパーゼ阻害,α-グルコシダーゼ阻害,および好塩基球白血病細胞(RBL-2H3)を用いた脱顆粒抑制,基底膜浸潤阻害などの抗肥満,抗糖尿病,抗アレルギー及びがん転移抑制作用に関するin vitroアッセイおよびマウスを用いたin vivoアッセイを実施した.その結果,中近東地域において風邪や喘息などの治療に用いられるとともに食品としても供されているNigella sativa種子から,マウス初代培養肝細胞を用いた脂質代謝促進作用を指標に活性成分を探索し,活性成分としてdolabellane型新規ジテルペンアルカロイドnigellamine類を単離・構造決定した.地中海沿岸地域を原産とし,日本においてもハーブとして用いられるセイジ(Salvia officinalis,葉)の抽出エキスに,オリーブ油負荷マウスでの血中中性脂質上昇抑制作用が認められ,リパーゼ阻害活性を指標に分離・精製した結果,活性成分としてabietane型ジテルペンcarnosic acidを見いだした.茶花エキスなどに高脂肪食飼育マウスにおける体重増加や血清中性脂質の増加抑制などの抗肥満作用,胃粘膜保護作用,RBL-2H3を用いた脱顆粒抑制作用が見出された.血清中性脂質の増加抑制作用や胃粘膜保護作用成分として新規トリテルペンサポニンfloratheasaponin類を明らかにした.石蓮花エキスに糖尿病モデルKK-A^yマウスでの血糖降下作用やPPAR-γ様作用を見出すとともに多数の新規アシル化フラボノール配糖体を単離した.抗アレルギー物質としてタイ天然薬物Alpinia galanga根茎および主要なフェニルプロパノイド1'S-1'-acetoxychavicol acetateに顕著な脱顆粒抑制および受身皮膚アナフィラキシー反応抑制作用を見出した.種々の誘導体を合成し,検討したところ,4位または2位および1'位のアセトキシル基が活性発現に必須であること,2'-3'位エキソメチレンは強い活性発現に重要など構造と活性に関する知見を得た.大黄のスチルベンおよびタイ産Curcuma zedoariaのクルクミノイドに抗アレルギー作用を見出し,活性発現の必須構造を明らかにした.さらに,がん細胞浸潤抑制物質としてbaicaleinなどの数種のフラボノイドに強い抑制活性を見出すなど,平成16年度の当初計画をほぼ達成したものと考える.
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