Research Abstract |
酸素分子の分子間力には磁気的相互作用が大きく関与していることから,細孔中で形成される酸素分子クラスターでは,「磁場誘起再配列」が起きることが予測される.これは従来研究されている低次元磁性体では見られない新しい量子効果であり,分子配列の違いによって多彩な磁気的振舞いが期待される.Cu-1,4-cyclohexanedicarboxylic acid中に吸着した酸素分子は特有のメタ磁性的振舞いを示すことがわかっている(W.Mori,T.C.Kobayashi et al.,Mol.Cryst Liq.Cryst.306(1997)1.)が,粉末法X線回折(XRPD)実験によると,この物質は室温で単一相が得られず,酸素分子の吸着構造が明らかになっていない.最近,他グループの研究により,低温で構造転移が起き単一相が得られるという報告があった.これを受けて当グループでは,酸素および窒素分子吸着体のXRPD実験を行い,細孔中での分子の配列構造を明らかにした.02-02ダイマーを形成しているCu2(pzdc)2(pyz)中吸着酸素(R.Kitaura,T.C.Kobayashi et al.,Science298(2002)2358.)と比較すると,一次元鎖的な配列に近いが,温度因子が大きいため,最終的な決定にはより低温でのXRPD実験が必要である.さらに磁場中におけるXRPD実験を行うことにより,「磁場誘起再配列」の実験的検証が期待される. 最近,細孔表面に金属イオンやドナー性の配位子が露出した配位高分子の合成が行なわれている.これらの系では,磁性金属イオンと02分子間の磁気的相互作用を反映した磁気吸着機能や,ホストーゲスト間の電荷移動の可能性が考えられる.本年度,Cuイオンが露出しているCu-BDTについてXRPD測定と磁気測定を行った.XRPDの結果は現在解析中であるが,磁気測定ではCuイオンと酸素分子の磁気的相互作用の存在を示す振舞いは観測されなかった.今後の研究の進展が期待される.
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