2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16074213
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
杉本 学 熊本大学, 大学院・自然科学研究科, 助教授 (80284735)
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Keywords | 電子状態理論 / 計算化学 / 表面配位空間 / 電気特性 / 分子ワイヤ / 太陽電池 |
Research Abstract |
密度汎関数法による電子状態計算を用いて、金属錯体と金属表面からなる分子ワイヤの電気特性に関する理論的解析を行なった。検討した分子ワイヤは、Pt(II)アセチリド錯体である。電極としては、金電極およびリチウム電極を用いた場合を検討した。得られた計算結果は実験を比較的良く再現することを確認でき、用いた計算方法の妥当性が検証された。本研究では、形状と種類の異なる金属電極に関する検討を行なったが、その結果、それらの違いによって、同一分子であっても分子ワイヤの電気特性が大きく異なることを予測する結果を得た。一方、分子ワイヤの電気特性を支配する電子論的因子の一つである固体-分子間の電子カップリングの強さを、クラスターモデルに対する励起状態計算によって評価する研究も実施した。本研究では、Nitzanにより提案された電子移動速度とコンダクタンスを関係づける理論式に基づいて解析を行なった。モデル系としては、4つのAu原子からなるクラスターモデルの表面に、ベンゼンジチオールおよびその誘導体がメチレン鎖を介してAuクラスターに結合した系に注目した。励起状態計算を時間依存密度汎関数法で行なったところ、吸着分子の種類および金属表面に結合する非共役系部位の長さに依存して、ワイヤ系でのコンダクタンスが変化する結果を得た。これらの理論計算による知見は、分子ワイヤにおける電気特性を制御する上で重要な示唆を与えるものと思われる。加えて、光電変換素子として注目されている色素増感太陽電池に用いられる色素材料に関する励起状態計算を行ない、光電流発生を支配する色素の光吸収特性に関する理論解析を行なった。その結果、色素材料の光吸収特性は電解質溶液を構成する溶媒の極性によって大きく変化していることが明らかとなった。この知見は表面配位空間における光電変換特性において、溶媒の最適化および溶媒効果を考慮した色素材料の設計が必要であることを示唆する。
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Research Products
(5 results)