2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16074213
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
杉本 学 熊本大学, 大学院自然科学研究科, 助教授 (80284735)
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Keywords | 配位空間 / 量子化学 / 錯体化学 / 電子状態 |
Research Abstract |
配位空間の化学的特徴のひとつとして、分子あるいは空間の形状を明確にすることは重要である。本研究では、電子状態計算を利用して分子の表面形状を決定するアルゴリズムを開発した。このアルゴリズムは、あるイオンをプローブとの相互作用エネルギーによって、注目する物質の空間的な形状を定義するものである。この計算アルゴリズムを採用すれば、分子表面における化学的相互作用の強弱をあらわにマッピングでき、分子形状を物理的に意味のある量として解析することが可能となる。本研究では、生体系でのリガンド-レセプター間相互作用を念頭におき、水素結合的相互作用を反映する分子形状を解析する目的で、H^+とF^-をプローブイオンとして採用した。電子状態計算はMP2法を用いて行った。水、アセチレン、二酸化炭素など代表的な小分子の形状を調べたところ、lone pair軌道、π軌道などの特徴を反映する形状が得られた。従って、本研究で開発したアルゴリズムを用いると、単に原子球のかさねあわせではない、化学的に意味のある分子形状を定義できることがわかった。 この研究と平行して、同じ特定領域研究に参加している実験グループとの共同研究として、実際に合成された金属錯体の反応性、構造、光学特性に関する理論的解析を行った。具体的には、電子状態計算を実施して、亜硝酸還元酵素モデルとなるCu錯体でのNO_2の配位構造と安定な電子状態の解析(阪大との共同研究)、アゾベンゼン部位を有するフォトクロミック金属錯体の励起状態の帰属(東大との共同研究)、CoRu多核錯体の励起状態と結合性に関する解析(東大との共同研究)を行った。
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Research Products
(4 results)