2004 Fiscal Year Annual Research Report
放射光X線散乱法による量子物質相の精密結晶構造と電子状態の研究
Project/Area Number |
16076202
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
村上 洋一 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60190899)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前川 禎通 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (60005973)
澤 博 高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 助教授 (50215901)
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Keywords | 軌道秩序 / 電荷秩序 / 電荷密度波 / 共鳴X線散乱 / 共鳴非弾性X線散乱 / 構造解析 / モットギャップ / 電子励起 |
Research Abstract |
本特定領域研究における主要な設備備品となる、放射光強磁場中回折装置の設計を行い、KEK放射光研究施設(PF)に納入した。本回折計は、H=8Tまでの磁場中でX線回折実験を行うことができ、今後、磁場誘起構造相転移の研究に供せられる。現在、その立ち上げ・整備を行っている。一方、レーザーと組み合わせた時分割回折実験のための回折計を同施設PF-ARに設置し、その整備を行っている。上記の両装置とも来年度後半からの稼働を予定している。 今年度の主な研究実績は下記の3点である。 1.銅フッ化物の軌道秩序における希釈効果 KCuxZn1-xF3系における軌道秩序転移点のCu濃度依存性を、放射光粉末X線回折と共鳴X線散乱によりしらべ、温度-Cu濃度相図を完成した。その結果T=OKにおいて約x=0.6付近で軌道秩序が消失することが分かった。この値は3次元系のパーコレーション濃度とは大きく異なっている。 2.共鳴X線散乱による有機電荷秩序系の構造解析 (DBr-DCNQI)2CuにおけるCuイオンの電荷秩序とDCNQI有機分子の電荷密度波の構造解析を、通常のX線構造解析に共鳴X線散乱を併用することにより行った。その結果、低温構造の空間群はこれまで考えられていたものとは異なること、Cu電荷秩序とDCNQI電荷密度波秩序は整合していることの2点が明らかになった。 3.銅酸化物における共鳴非弾性X線散乱(RIXS)実験の理論的解析 YBa2Cu307-δのRIXS実験結果において、Cu-O面とCu-Oチェーンからのモットギャップ励起を分離して観測し、その理論的解釈を行った。一方、電子ドープ系であるNd1.85Ce0.15CuO4において上部ハバードバンド内励起の観測に成功し、その理論的解釈を行った。
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