2005 Fiscal Year Annual Research Report
放射光X線散乱法による量子物質相の精密結晶構造と電子状態の研究
Project/Area Number |
16076202
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
村上 洋一 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60190899)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澤 博 高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (50215901)
前川 禎通 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (60005973)
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Keywords | 電荷秩序 / 軌道秩序 / 1次元強相関電子系 / スピン電荷分離 / 超伝導磁石 / Mn酸化物薄膜 / 内包フラーレン |
Research Abstract |
計画A03班有馬グループと協力して、KEK放射光施設に超伝導磁石を搭載した回折計を導入し、その立ち上げ実験を行った。H=8.0Tまでの横磁場中で、放射光を用いたX線回折実験を行うことができるようになった。この装置を用い、Mn酸化物の電荷・軌道秩序の磁場応答に関する研究を行った。 本特定領域研究(計画A03班宮野グループ)で発見された、一次構造相転移を示すMn酸化物薄膜を用い、この薄膜の電荷・軌道状態を共鳴X線散乱により研究を行った。その結果、電荷・軌道秩序状態が降温によって二段階に起こること、最低温相ではバルク結晶では出現しない新しい電荷・軌道秩序相が実現していることが明らかになった。また本特定領域研究内のA01班高木グループにより、Ar原子を内包させたC60にアルカリ金属をドープすることによって世界で初めて内包フラーレン超伝導体が実現されたが、その内包状態の詳細について放射光X線を用いた精密な実験を行いその解析を行った。一方、共鳴X線散乱法による価数揺動系の電荷秩序状態の研究を開始した。 銅酸化物や有機化合物等の1次元強相関電子系は、電子の持つスピンと電荷が分離することよる特異な電子励起を示す。これらの電子励起は光電子分光や共鳴X線散乱法により詳しく観測することが可能になってきた。このような電子励起に対する電子格子相互作用の効果を理論的に調べた。その結果、1次元強相関電子系ではスピン電荷分離は電子格子相互作用に対して強固であり、高次元系に比べてポーラロン効果は抑えられることが明らかになった。この結果は最近の実験をうまく説明している。
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