2006 Fiscal Year Annual Research Report
放射光X線散乱法による量子物質相の精密結晶構造と電子状態の研究
Project/Area Number |
16076202
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
村上 洋一 東北大学, 大学院理学研究科, 教授 (60190899)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澤 博 高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (50215901)
前川 禎通 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (60005973)
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Keywords | 電荷秩序 / 軌道秩序 / 1次元強相関電子系 / 銅酸化物高温超伝導体 / フラストレーション / Mn酸化物薄膜 / 共鳴X線散乱 / 電荷密度波 |
Research Abstract |
高エネルギー加速器研究機構Photon Factoryにミニポールアンジュレータの新ビームラインBL-3Aが立ち上がり,本特定領域で購入した超伝導磁石二軸回折装置が設置された。このビームラインでは一般的なベンディングマグネットのビームラインの10倍の強度が得られ,さらに移相子を導入したことにより,入射X線の偏光特性を制御しながら散乱実験を行うことが可能となった。これにより下記の成果を得た。(1)軌道・電荷秩序の制御が可能となったMn薄膜において,電子秩序状態の磁場応答を観測することに成功した。(2)強相関電子系である一次元分子性伝導体において,新しい幾何学フラストレーションによる電荷密度波と電荷秩序の共存という,新しい基底状態の実現によるWigner結晶化を放射光X線により直接観測することに成功した。 (3)フラストレーションを内蔵した希土類棚炭化物において,共鳴X線散乱と中性子磁気散乱を相補的に利用することにより,フラストレーションに起因すると考えられる2次元の短距離秩序と,その3次元長距離秩序への相転移を観測することに成功した。 (4)銅酸化物高温超伝導体のCuO_2面間の結合は、ドープされたモット絶縁体間の電子のホッピングであり、銅酸化物の物性を決める重要な要素の一つである。その結合の強さが、面間の重なり積分とCuO_2面内のキャリア濃度の積で決まることを、Gutzwiller近似を用いて示した。そして、多層系銅酸化物中のキャリア濃度の異なるCuO_2面問の結合が角度分解光電子分光でどのように観測されるのかを示し、面間のキャリア濃度の違いについて明らかにした。
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