2008 Fiscal Year Annual Research Report
放射光X線散乱法による量子物質相の精密結晶構造と電子状態の研究
Project/Area Number |
16076202
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
村上 洋一 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 教授 (60190899)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澤 博 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 教授 (50215901)
前川 禎通 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (60005973)
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Keywords | 放射光 / 遷移金属酸化物 / 電荷・軌道秩序 / 光励起状態 / 電子-格子相互作用 / 精密電荷密度解析 / X線回折 / スピントロニクス |
Research Abstract |
強相関電子系である遷移金属酸化物を対象として, KEK/Photon Factoryにおいて, H=8Tまでの強磁場中やP=10GPaまでの超高圧下でのX線回折実験を行い, 下記のような電荷・軌道状態を明らかにした. 一方, SPring-8に新しく導入される単結晶回折計の立ち上げを試みた. 1. 複数の軌道/スピン秩序の競合するバナジウム酸化物を対象として, 圧力下X線回折実験を行った. その結果, 加圧ともに系のバンド幅は増大するが, その効果では説明できない軌道/スピン秩序相の変化を観測した. この結果は, 加圧により希土類金属イオンの軌道状態が遷移金属イオンの軌道状態に混成してくることにより, 無理なく説明されることを提案した. 2. 強相関遷移金属酸化物薄膜における電荷・軌道秩序に関する研究を放射光X線回折を用いて行った。より精度の高い電子状態の解析を行うことを目的として、SPring-8に高エネルギーX線回折を可能とする単結晶回折実験装置が導入され、本年度はこの立ち上げ及び調整などを行った。この装置は2009年度より本格的に稼働が始まる計画である。 3. 遷移金属酸化物は超伝導材料、透明磁石及びスピンエレクトロニクス材料として、重要である。量子モンテカルロ法、動的密度繰り込み群法等の数値計算手法を用いて、磁性と光励起の関係を調べた。これらの物質では電子相関が強いことから、光励起及びその緩和には電子-格子相互作用と電荷-スピン相互作用が複雑にからみ合っていることを明らかにした.
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