Research Abstract |
基礎科学実験や先端的な生産・医療等においては,高温,強磁場,真空などの特殊環境がしばしば必要とされるが,一般のモータは,それら特殊環境において利用が困難な場合が多い.そこで本研究では,静電アクチュエータに着目し,特殊環境下における性能評価・性能向上の研究を進めている. 昨年度までに,MRI中でフィルム形静電モータの評価を行い,静電モータがMRIの強磁場中でも安全かつ安定に動作でき,また,撮像にも大きな障害を与えないことを確認してきた.本年度は,その成果をベースとして,脳科学ならびに生体力学研究への応用をめざした研究を実施した.脳科学分野では,MRI中で被験者に運動をさせ,そのときの脳活動をはかることで随意運動に関わる脳機能を解明しようとする試みが行われており,その実験において,MRI対応の力覚提示装置が必要とされている.しかし,これまでに十分な性能を有する力覚提示装置は実現されていない.そこで,静電モータを用いて力覚提示装置を試作し,その性能を検証した.また,生体力学への応用として,MRI中で豚の肝臓を静電モータにより変形させ,その変形の様子を動画像として取得することに成功した. 極低温場への応用として,液体窒素中において細胞培養液などの凍結液滴を静電気力で搬送することを試みた.静電気力を用いたデバイスは液体窒素中で安定に動作でき,液滴の搬送・位置決めが可能であることが確認できた.今後,細胞工学分野への応用を検討していく. 特殊環境への適用をめざして新しいアクチュエータの開発を進めた.特殊環境では,使用できる材料や構造に制約があるため,それらの制約をなるべく受けないシンプルな構造の静電インパクト駆動アクチュエータを新たに考案し,その動作を検証した.
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