Research Abstract |
基礎科学実験や先端的な生産・医療等においては,高温,強磁場,真空などの特殊環境がしばしば必要とされるが,一般のモータは,それら特殊環境において利用が困難な場合が多い.そこで本研究では,静電アクチュエータに着目し,特殊環境下における性能評価・性能向上の研究を進めている. 本研究初期段階での検討において,強磁場を利用するMRI装置周辺におけるアクチュエーションへの要求が高いことを確認したことから,本研究課題では,MRI周辺での静電アクチュエータの応用を主要課題の一つとして実施している.昨年度,MRIを用いた生体力学研究へ静電アクチュエータを応用することを提案したが,本年度は,昨年度の提案ならびに基礎実験結果にもとづき,人体をはじめとする生体試料の変形動作を計測するシステムを構築した.システム構築の一環として,シールド型歪みゲージを用いたMRI対応力センサを開発し,これを静電アクチュエータと組み合わせることで,人体などの生体試料が外力に対してどのように変形するかを動画像として観察することに成功した. また,昨年度に引き続き,将来的な特殊環境への適用をめざした新しいアクチュエータの開発を進めた.特殊環境では,使用できるアクチュエータ材料や構造に制約があるため,それらの制約をなるべく受けないシンプルな構造の静電インパクト駆動アクチュエータを昨年度提案している.本年度は,その動作を説明する理論モデルを構築し,性能の最適化などに関する研究を行った. さらに,宇宙などの真空環境での外壁検査等への適用をめざして,静電気力による壁面移動機構の開発を行った.従来,主として研究されてきた壁面移動機構は,空気圧や磁力などを用いてきたものが多く,特殊な環境への応用が難しいと考えられる.これに対し,本研究では,静電気力を用いた壁面移動機構を提案し,通常の大気環境下の実験において,金属壁面ならびにガラス壁面に対する吸着・移動が可能であることを実証した.
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