Research Abstract |
昨年度は,超音波モータの非線形性に焦点を当て,計測および数値計算を用いてその非線形動特性解析を行った。この結果,超音波モータの特性は概ね解析可能となったので,今年度は,昨年度までの知見を用いて,新たな超音波モータの制御法に関する基礎的な検討を行った。まず,多自由度超音波モータの構造と制御法の設計は困難であるため,新たに遺伝的アルゴリズムを用いた多自由度超音波モータの設計法を開発した。すなわち,超音波モータの振動子を立方体状三次元要素群により複数個形成し,それぞれの振動子が超音波モータとして適切か否かを判定する。不十分であれば,交配,突然変異,淘汰といった遺伝的オペレーションを行い,最適化を行う。この結果,これまでには設計不可能であったような新たな多自由度超音波モータの振動子形状を得た。また,新たに,回転子を複数個有する多自由度超音波モータの開発も行った。すなわち,これまでの超音波モータでは,二つの固有振動を重畳する制御によって,振動子と回転子の接触部に楕円運動を生成していた。これに対し,本モータでは新たに基本モードとその整数倍の周波数を有する振動を重畳することにより,8の字型の振動を生成した。このような新しい制御法によっても超音波モータは駆動可能であることを明らかにした。さらに,効率向上と摺動損失および磨耗の低減を目指した新たな超音波モータの制御法も提案した。すなわち,基本振動モードに3倍,5倍,…の周波数の振動を重畳すれば,正弦波状ではなく三角波状の振動を形成できることに着目し,三角波状の送りを用いる新たなリニア超音波モータを設計した。また,実際に本モータを試作し,三角波状の駆動が可能であることを確認した。今後は,効率向上と摺動損失および磨耗の低減を確認する予定である。
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