Research Abstract |
本研究は,酸化物イオン伝導体をガス雰囲気中で電圧印加・加熱しながら、その内部の電位分布を電子線ホログラフィにより観察して、ヘテロ接触界面近傍における空間電荷層や表面電荷物理現象を解明し,燃料電池等ナノイオニクスデバイスの開発に資することを目的としている。 本年度は,電子線ホログラフィその場観察のために,試料を加熱しながら電圧印加可能な透過電子顕微鏡用特殊試料ホルダーを設計製作した。目下試料温度の更正をするために,電流-温度特性を計測中である。 また,焼結法で作製した8-YSZを厚さ0.5mmまで3000番の砥粒で研磨し,Pt電極を大気中で1000度1時間焼き付けた試料を収束イオンビーム(FIB)およびイオンミリング法を併用して薄片化し,加速電圧200kVと1000kVの透過電子顕微鏡により観察した。1000kV電子顕微鏡観察ではZrO_2の0.26nmの格子面がPtの領域にまでわたって観察され,PtがZrO_2の中に入り込んでいることがわかった。また,Ptの領域で約0.43nm,約0.70nmおよび約0.78nmの超格子が見られ,モアレ像によりPtとZrO_2が重なっていることがわった。現状では,これらの超格子構造が,組成のどんな変化に起因するものかは不明であるが,Ptの酸化物ができている可能性が高い。今まで,高温イオン伝導体-電極界面におけるこのような超構造化が観察されたという報告はない。 なお,試料はFIBにより薄片化した後,その電極に金または銅の細線を取り付け,試料ホルダーと連結しなくてはならない。そのための試料作製技術の開発も不可避であり,目下,バルク材料により試行中である。
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