2006 Fiscal Year Annual Research Report
高次構造による電子状態と波面の制御を利用した高機能希土類発光体の開発
Project/Area Number |
16080219
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
栗田 厚 関西学院大学, 理工学部, 教授 (70170082)
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Keywords | 蛍光 / 希土類 / 固相反応 / 量子井戸 / 励起子 |
Research Abstract |
1 Y_2O_3 : Eu^<3+>蛍光体において、ZnO、MgOなどの不純物を加えると、蛍光強度が増大する現象の機構を明らかにするために、固相反応によって試料を作製し、発光特性とX線回折の測定を行った。試料は、粉末原料から空気中で5時間、1200℃で焼成して作製した。母体にY_2O_3、希土類添加物の原料にEu_2O_3を用いた。さらに、異なる量のZnOを加えた。ZnOを加えて試料を作製することによって、発光強度が著しく増加し、1%のZnOを加えるだけで発光強度は約2倍になった。発光の減衰特性を調べると、ZnOを加えずに作製した試料の発光成分は、ZnOを加えて作製した試料の発光成分とEu_2O_3の発光成分の和で表されることが分かり、ZnOを加えずに作製した試料には、Y_2O_3に組み込まれなかったEu^<3+>がEu_2O_3のまま多く残っていると考えられる。また、X線回折測定により、ZnOの付加量が増えるにつれて、Y_2O_3の(222)回折ピーク(29.20°)がわずかに低角側ヘシフトする様子が観測された。Y_2O_3のみにZnOを加えてもほとんどシフトが起こらなかったため、このシフトはEu^<3+>がY_2O_3に組みこまれて起こったと考えられる。これらの結果は.ZnOによって、Y_2O_3に組み込まれるEu^<3+>の量が増加しているということを示している。Y_2O_3 : Sm^<3+>についても発光スペクトル、X線回折測定を行い、同様の結論を得た。また、一般にY_2O_3は立方晶のみであるが、Eu_2O_3およびSm_2O_3は立方晶と単斜晶の2種類の結晶構造を持つことが知られており、原料であるEu_2O_3およびSm_2O_3の結晶構造の違いによる固相反応への影響および、蛍光体の発光特性の変化も調べた。 2 MBE法によって作製されたSm^<3+>添加ZnS薄膜について、その発光機構を調べた。10KでのSm^<3+>の発光の励起スペクトルには、今まで報告されていない、自由励起子のエネルギーにピークを持つバンドが観測された。母体ZnSのバンド間励起によるSm^<3+>発光の温度消光特性の測定結果には、2つの無輻射過程の効果が見られた。これらの結果から、MBE法で作成した良質のZnS : Sm^<3+>試料では、自由励起子から希土類イオンへのエネルギー移動が効率よく起きており、その温度消光は、束縛励起子と自由励起子の熱解離によって説明できることが明らかになった。
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