Research Abstract |
真核鞭毛の運動の基本は,鞭毛軸糸を構成する9本のダブレット微小管間に起こされる滑り運動であり,この滑りは,ダブレット上に並ぶダイニンが力を出すことによって起こされる.鞭毛内にある多種類のタンパク質は周辺制御因子としてダイニンのdynamic statesをモジュレートすることにより,屈曲形成にカップルしてダイニンの活性を制御し,その結果振動運動が時間空間的に巧みにコントロールされていると考えられる.本研究では、ダイニンの特性をモジュレートする生理的条件および鞭毛の振動運動の発生に関わる要素を解明すると共に,ダイニンの活性制御に最も重要なダイニン結合制御因子と中心対微小管/スポーク系の分子構築を解明することにより,振動運動を生み出すダイニンのdynamic statesの制御機構を明らかにすることを目指している.平成17年度においては,まずウニ精子鞭毛を用いて,鞭毛の振動の基礎となる微小管滑り運動の切り替え機構を解析し,滑りの切り替えは鞭毛の一定方向への屈曲により誘導されることを証明することに成功した.多種類存在する内腕ダイニンは屈曲の形成に必須であることから,その機能解析は重要である.ある種類の内腕ダイニンだけを欠失したクラミドモナス変異株をあらたに単離・解析し,そのダイニンの機能と重鎖遺伝子の配列を明らかにした.また,クラミドモナスゲノムデータベースを利用し,他のダイニンの重鎖に対応する遺伝子も同定した.さらに,ホヤ精子を用い,鞭毛タンパク質のプロテオーム解析から,外腕の新奇ドッキングタンパク質,スポークHSP40,MORN repeat protein,p33を精子軸糸の成分として同定した.また,外腕ダイニンに結合する新規カルシウム結合タンパク質「カラクシン」を同定し,これがカルシウム依存的に外腕ダイニンを調節していることを明らかにした.
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