Research Abstract |
ウニ精子鞭毛を用いて,振動運動を誘導する実験系を構築し,振動運動の開始条件を特定した.具体的には,低濃度ATP中で自発的に運動のできない鞭毛に力学的変形を与えることにより,屈曲の誘導に成功した.この実験系を用いて,ADP結合が振動運動の誘導に必須であることを明らかにした.蛍光ヌクレオチドアナログを用いたダイニンへの結合実験等により,ATPの加水分解活性はダイニンの滑り運動活性の誘導に十分な条件とはならず,ATPおよびADPの結合が必要であることを明らかにした.また,力学シグナルと軸糸内に誘導される滑りの切り換えの関係を明らかにした.精子鞭毛を構築する各分子の機能解析を行うために,ホヤ精子を用いて軸糸の分子構築に関してプロテオミクスの手法を用いた解析を行った.その結果,ホヤ精子軸糸のラジアルスポーク成分を合計で12種類同定した.また抗体を用いて,これらの成分のラジアルスポークにおけるトポロジーを解析した.さらに、精子鞭毛を構築する各分子の機能解析を行うために,トランスポゾンを用いてホヤ精子軸糸成分の遺伝子の導入を試みた,その結果,新規カルシウム結合タンパク質であるカラクシンとGFPの融合タンパク質の導入に成功し,GFP-カラクシンが軸糸に結合した精子を単離することに成功した.ダイニン分子の動作機構を調べるために,クラミドモナス鞭毛内の特定のタンパク質に蛍光色素を導入する遺伝子工学的な方法を新たに開発し,蛍光外腕ダイニンの1分子運動活性を調べた.その結果,外腕ダイニンがプロセッシブに運動できることがわかった.一方,鞭毛内に新に3種類の内腕ダイニンを見出し,そのうちの1つが基部に局在していることを明らかにした.
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