Research Abstract |
本研究課題では,細胞核の重要な高次構造体の1つである核膜孔複合体に焦点を当て,この複合体の重要な機能である核-細胞質間蛋白質輸送の制御を指標にして,その分子構築ならびに分子動態を明らかにすることを目的として研究を進めている.近年,核-細胞質間蛋白質輸送に関する研究は急速に進展し,輸送の基本的メカニズムの理解はかなり進んだ.しかし,核蛋白質/輸送因子複合体がどのように核膜孔を通過するのか,また,1つの核膜孔を蛋白質が互いに干渉を受けずに両方向性にどのように通過するのかという点はほとんど解析されていない.そこで,本年度は,先ず,核-細胞質間蛋白質輸送の方向性を保証している分子であるRanに着目し,そのサイクルに重要な役割を果たしているRanGAP(Ran GTPase activating protein)に焦点を当て,その分子動態を解析した.その結果,RanGAPがcasein kinase IIによってリン酸化を受けることを発見し,リン酸化によってRanBP1なちびにRanとの安定な3者複合体が形成されることがわかった.すなわち,RanGAPがリン酸化されることによりRanのサイクルに影響を及ぼし,ひいては核-細胞質間輸送の効率に変化を与える可能性が示唆された.さらに,核膜孔複合体が細胞分化に応答してどのように動態変化を示すかを明らかにするため,筋芽細胞であるC2C12細胞が筋管細胞に分化する過程で核膜孔複合体構成因子(ヌクレオポリン)がどのように変化するかを解析した.その結果,いくつかのヌクレオポリンの発現が分化に応じて変化することが示唆された.また,ヌクレオポリンの1つNpap60にはこれまでには知られていないshort formが存在し,importin αの核膜孔におけるリサイクリングにshort formが関与することを初めて見出した.
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