Research Abstract |
ERボディは幼植物体全身の表皮に存在するが,成熟葉には存在しないという特徴を持つ.しかし,成熟葉に傷害を与えるとERボディが誘導される.ERボディの主要構成成分であるPYK10(β-glucosidase)は,細胞が破壊されると巨大なアグリゲートを形成し活性化される.このPYK10アグリゲートの形成過程で,Jacalin-like lectins(JALs)がアグリゲートのサイズ制御因子として機能することが分かった(Nagano, et. al., under revision).即ち,病害虫による食害を受けた組織では,PYK10が活性化され,病害虫に対する忌避物質を生産するという新しい生体防御系の存在が示唆された.この忌避物質を同定する目的で,ERボディ形成不全変異体nailを用いたFT-MS解析を行い,PYK10の基質候補となる配糖体を特定することができた. ERボディ形成機構については分子遺伝学的手法を用いて,下記の成果を得た.ERボディの形成不全を示す変異体nai2を単離し,その原因遺伝子(At3g15950)産物がERボディに局在していることを明らかにした(Yamada, et. al., submitted). NAI2は,ERボディの形成を制御する因子の一つであると考えられる.また,ERボディの形態異常を示す変異体tsuchinokoを単離し,その変異の原因がPYK10自身のN末端側のCys残基の置換であることが分かった.この結果は,PYK10そのものがERボディの形作りに関わっていることを示している.一方,ERボディが細胞内で凝集する変異体kam2の原因遺伝子産物KAM2は,未同定の小胞に局在しており,エンドソームの形成や重力屈性や胚の成長軸の決定に関与していた(Plant Cell, 2007).
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