2004 Fiscal Year Annual Research Report
環境適応戦略としてのペルオキシソームの可逆的機能分化
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16085209
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
西村 幹夫 基礎生物学研究所, 高次細胞機構研究部門, 教授 (80093061)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 誠 基礎生物学研究所, 高次細胞機構研究部門, 助教授 (50212155)
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Keywords | ペルオキシソーム / ダイナミン様タンパク質 / PEX遺伝子 / β酸化欠損変異体 / タンパク質の細胞内輸送 / RNAi法 |
Research Abstract |
本年度は、以下の2つの方法によりペルオキシソーム機能欠損変異体の解析を行い、ペルオキシソーム機能を制御する遺伝子の同定とその機能解析を行った。 [1]ペルオキシソーム形成不全変異体 これまでの研究からペルオキシソームの機能欠損が形態変化を伴う場合があることが明らかになっている。そこで、GFPのカルボキシ末端にPTS1を付加した融合タンパク質(GFP-PTS1)を用いてペルオキシソ-ムを可視化した形質転換アラビドプシスに対してEMS処理を施し、後代でペルオキシソームの形態に異常が生じる多数の変異体を同定した。これらの変異体は、ペルオキシソームが長くなるものはじめ、ペルオキシソームが大きいもの、ペルオキシソームが一カ所に固まって存在するもの、GFP-PTS1がペルオキシソームへ輸送されないものなどに分類できる。本年度は、長いペルオキシソームを持つ変異体のうちの1系統(apm1)に関して遺伝子の同定および遺伝子産物の機能解析を行い、apm1変異体の原因遺伝子DRP3Aは、ペルオキシソームとミトコンドリア両方の分裂を制御するダイナミン様タンパク質をコードすることを明らかにした。この結果は、複数のオルガネラの分裂が同一の分子によって調節されることを示しており、オルガネラの機能を統一的に制御するメカニズムが存在する可能性が示唆された。 [2]PEX遺伝子群の逆遺伝学的解析 PEX遺伝子はさまざまな生物で解析が進んでいるペルオキシソーム制御遺伝子の総称で、PEX1をはじめ、30を越える遺伝子が知られている。我々は、ペルオキシソームβ酸化欠損変異体の解析からPEX14遺伝子を同定し、本遺伝子産物のアミノ酸配列が他の生物種と弱い類似性を持つことを明らかにした。そこで、DNAデータベースの検索を行い、アラビドプシスゲノムから全部で21個のPEX遺伝子候補を同定した。本年度は、これらの遺伝子のうちでペルオキシソームタンパク質の細胞内輸送に関与すると考えられるPEX5およびPEX7遺伝子についてRNAi法によるノックダウン株を作製し、これら遺伝子産物の機能解析を行った。その結果、Pex5pとPex7pがサイトゾルでレセプター複合体を形成して、PTS1やPTS2を持つペルオキシソームタンパク質の識別を行っていること、ペルオキシソームへのタンパク質輸送にはPex5pとペルオキシソーム膜タンパク質であるPex14pの結合が必要であることを明らかにした。さらに、植物がその生育段階に応じてPTS1とPTS2のタンパク質輸送経路を使い分けていることが示され、ペルオキシソームを介した機能発現にタンパク質輸送レベルの調節が働いていることが示唆された。
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Research Products
(5 results)