2004 Fiscal Year Annual Research Report
ラット脳の性分化の際にエストロゲンにより駆動される制御分子の同定と機能解析
Project/Area Number |
16086210
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
佐久間 康夫 日本医科大学, 大学院・医学研究科, 教授 (70094307)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 昌克 日本医科大学, 医学部, 助教授 (90143239)
木山 裕子 日本医科大学, 医学部, 講師 (60234390)
ISHWAR S. Parhar 日本医科大学, 医学部, 講師 (10271339)
近藤 保彦 日本医科大学, 医学部, 助手 (00192584)
折笠 千登世 日本医科大学, 医学部, 助手 (20270671)
濱田 知宏 日本医科大学, 医学部, 助手 (90312058)
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Keywords | 脳の性差 / アロマターゼ仮説 / ニューロンの移動 / 選択的細胞死 / 内側視索前野 / 性的二型核 / 前腹側室周囲核 / Gpr54 |
Research Abstract |
雌雄の脳にはニューロン数の相違やニューロンの細胞体体積、シナプス数など顕著な性差の存在する部位がある。脳の性差は性分化の臨界期と呼ばれる個体発生の特定の時期に内分泌環境をはじめとする環境条件によって成立する。齧歯類ではこの時期が周産期から出生直後にあり、精巣の分泌するテストステロンが脳内でCYP19アロマターゼによる酵素反応により芳香化され、エストラジオールとなってエストロゲン受容体に作用することで、性行動や生殖内分泌調節に関わる脳内神経回路が雄型化するという「アロマターゼ仮説」が提唱されている。しかし、エストロゲン受容体以降の活性化以後、どのような遺伝子カスケードの動作により、ニューロンの移動や選択的死滅に変化が起こり、最終的にニューロン数などに性差が生じるかは皆目不明である。さらに、脳内には内側視索前野の性的二型核(SDN-POA)のように雄で発達し多数のニューロンを含んでいる部位と、われわれが2002年に報告し大きな反響を呼んだ前腹側室周囲核(AVPV)(PNAS 99:3306,2002)のように雌で発達している部位があり、「アロマターゼ仮説」で提唱されている機構が一様に、同一の時期に作用するとは考えにくい。実際、われわれは嗅覚を手がかりとする雄ラットの性的指向性が性成熟後の去勢や性ホルモンで変化することを観察している。形態学的にも嗅覚の中継核である扁桃体背内側核のニューロンの細胞体の大きさは血中テストステロン濃度の消長に応じて変化する。そこで、計画研究初年度の本年においては、雌雄ラットの脳で明確な形態学的性差が存在する部位に注目し、性分化の臨界期前後で部位特異的に発現する遺伝子を特定することとした。予備実験により、SDN-POAとAVPVから解析に十分な量のtotal RNAが採取できることを確認し、これまでにラット遺伝子のエストロゲンによる遺伝子発現の変化を評価することを目的に、産総研との共同で開発したマイクロアレイシステム「エストロアレイ」を用いて解析を開始した。これにより雌雄で発現が異なる遺伝子を見いだし、そのカスケードの同定から、神経細胞死・神経細胞の移動の過程を明らかにする。すでに本実験計画の予備の段階で、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)ニューロンの内側視索前野への定着とGnRH合成の開始に新規Gタンパク共役受容体Gpr54が関わることを発見し、報告した(Endocrinology 145:3613,2004).
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