2007 Fiscal Year Annual Research Report
ラット脳の性分化の際にエストロゲンにより駆動される制御分子の同定と機能解析
Project/Area Number |
16086210
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
佐久間 康夫 Nippon Medical School, 大学院・医学研究科, 教授 (70094307)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 昌克 日本医科大学, 医学部, 准教授 (90143239)
木山 裕子 日本医科大学, 医学部, 講師 (60234390)
近藤 保彦 日本医科大学, 医学部, 講師 (00192584)
折笠 千登世 日本医科大学, 医学部, 助教 (20270671)
濱田 知宏 日本医科大学, 医学部, 助教 (90312058)
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Keywords | 遺伝子発現制御 / 部位特異性 / 視床下部腹内側核 / 内側視索前野 / 選択的細胞死 / エストロゲン / 性行動 / 性差 |
Research Abstract |
成熟雌ラットの視床下部腹内側核の中脳への投射ニューロンはエストロゲンにより興奮性が増加するのに対し、内側視索前野の同様なニューロンはエストロゲンにより抑制されることが電気生理学的に示されている。この相違が、発情雌ラットのみに見られるロードーシス反射の神経学的基盤とされる。これまでにラット脳でエストロゲンによる制御を受ける遺伝子をマイクロアレイを用いて定性的に同定してきたが、本年度は腹内側核と内側視索前野の部位特異性に注目し、定量的解析を行った。対象としたのは神経型ニコチン様受容体α4サブユニット遺伝子(Chrna4)、GABA_A受容体δサブユニット遺伝子(Gabrd)、セロトニン受容体サブタイプ6遺伝子(Htr6)、GABA輸送体2遺伝子(Slc6a13)である。real-time RT-PCR法とWestern blot法により、2つの部位における遺伝子発現を調べ、卵巣摘除雌と卵巣摘除後エストロゲン投与雌の間で比較した。また、Chrna4の遺伝子発現カスケードに含まれるアポトーシス関連遺伝子Bax、Bcl2と、Gabrdの下流に位置するプロテインキナーゼC-ε(Prkce)についても同様の定量実験を行った。プロゲステロン受容体遺伝子(PgR)とエストロゲン受容体α(ERα)遺伝子をエストロゲンによりそれぞれ正負の制御を受ける対照とした。エストロゲンによるGabrdの転写は、腹内側核において内側視索前野より有意に促進された。逆に、Slc6a13のエストロゲンによる転写は内側視索前野において腹内側核より有意に抑制された。アポトーシス促進遺伝子であるBax、抗アポトーシス遺伝子であるBcl2は、それぞれエストロゲンにより転写が抑制・促進された。Baxのダウンレギュレーションは腹内側核で内側視索前野より有意に大きく、Bcl2のアプレギュレーションは、内側視索前野で腹内側核より有意に大きいという逆方向の部位特異性制御が存在した。Westem blot法によるタンパク発現においても、エストロゲンによるこれらの遺伝子の部位特異性が確認できた。一連の実験によりエストロゲンによる遺伝子発現の制御が、脳内部位特異的に行われていることを始めて確証する結果が得られた。
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