2005 Fiscal Year Annual Research Report
魚類における性決定と生殖腺の性分化の分子メカニズム
Project/Area Number |
16086213
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
長濱 嘉孝 基礎生物学研究所, 生殖生物学研究部門, 教授 (50113428)
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Keywords | 性決定 / 性分化 / 生殖腺 / エストロゲン / 性決定遺伝子(DMY) / 芳香化酵素 / DMRT1 / メダカ / ティラピア |
Research Abstract |
本研究の目的は、魚類、特にメダカとティラピアをモデル生物に用いて性決定と生殖腺の性分化の分子メカニズムを明らかにすることである。2年次の平成17年度は以下の研究を行った。 1)性決定メカニズムに関する研究: プロモーター解析により、メダカの性決定遺伝子DMYがメダカの卵巣型芳香化酵素遺伝子の発現を抑制する作用をもつことを示した。 ティラピアの性決定期と考えられる孵化後5-7日の生殖腺で発現する遺伝子を独自に構築したマイクロアレイ系で解析することにより、XXとXYの生殖腺でそれぞれ特異的に発現する遺伝子群を単離した。さらに、単離した個々の遺伝子について定量的RT-PCRにより孵化後5-7日の変動を詳しく調べた結果、Y染色体に特異的と考えられる遺伝子がいくつか得られた。 2)性分化メカニズムに関する研究: メダカとティラピアの卵巣分化に果たす転写制御因子Foxl2の役割を調べた。メダカとティラピアのいずれにおいてもFoxl2遺伝子の発現は卵巣分化に先立って起こり、芳香化酵素遺伝子の発現より早い。特に、ティラピア生殖腺では孵化後5日ですでにFoxl2 mRNAの発現はXX生殖腺特異的であり、また芳香化酵素遺伝子の発現に先立って起こる。ティラピアのXX受精卵にFoxl2のドミナント/ネガティブ変異体を遺伝子導入すると、XX生殖腺でありながら精巣が形成され、成熟した精子が産生された。また、プロモーター解析により、メダカとティラピアでFoxl2は転写因子Ad4BP/SF-1と協調して卵巣型芳香化酵素遺伝子の発現を促進することが明らかになった。以上の結果より、魚類においてFoxl2はXX生殖腺を卵巣に分化される重要な転写因子であり、そのターゲットは芳香化酵素遺伝子であることが強く示唆された。
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