2009 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリアエネルギー変換を駆動する蛋白質複合体の機能の原子機構
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16087208
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
吉川 信也 University of Hyogo, 大学院・生命理学研究科, 教授 (40068119)
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Keywords | 酸素反応機構 / 膜蛋白質 / ミトコンドリア / エネルギー変換 / X線結晶構造解析 / チトクロム酸化酵素 / NADH-ユビキノン還元酵素 |
Research Abstract |
ウシ心筋チトクロム酸化酵素(CcO)の結晶化およびX線回折実験条件の検討を継続しSPriag-8で0.93A分解能の回折斑点を検出した。さらに、昨年の酸化型に引き続き、還元型についても、1.4A分解能での構造解析が可能なX線回折強度データの収集に成功した。水素原子位置決定を、方法の開発を進めながら推進する一方、酸化還元に伴う、非水素原子の位置変化を解析した。その結果、Mg^<2+>中心付近の水分子の位置に明らかな変化が認められた。また異常分散効果の精密解析により、休止酸化型酵素の酸素還元中心に塩素イオンが結合しているという主張を否定することができた。またリン原子の異常分散解析によりリン脂質の帰属の変更の必要性があきらかになった。CcOのO_2還元とプロトンポンプ機構解明のために呼吸阻害剤結合のX線構造に及ぼす効果を昨年に引き続きさらに詳細に検討した。その結果、完全還元型CN^-結合型では、CN^-は水分子を導入しCU_Bの配位子の一つであるHis290がCU_Bから脱離し、CN^-と残りの2個のHisが新たな平面3配位構造を形成した。一方O_2はFe_<a3>^<2+>に結合したときスーパーオキシドに近い電子状態になっていることが赤外分光解析により明らかにされている。したがって、O_2結合型もCN^-と同様に水分子を取り込んで上述の構造を形成すると考えられる。これらの結果はO_2がFe<a3>^<2+>に結合して1電子を受容して形成されたスーパーオキシドにより水分子が導入され1段階3電子還元の引き金になっていることを示唆している。さらに、H-pathwayの下部にある水経路の上部の容積が還元型以外のときは大幅に減少し水の通過が実質的に遮断されていた。この変化によリプロトンポンプの逆流を効率よく防ぐことが示された。 NADH-ユビキノン還元酵素の二次元結晶化結晶化条件の再現性がコール酸添加により大幅に向とした。F1FoATPaseの二次元結晶の品質は凍結によって大きく低下することが明らかになった。これらの結果は、このように巨大で不安定な膜蛋白質の2次元電子線構造解析の可能性を大きく示唆している。
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