Research Abstract |
本研究は,「聴覚知覚及び認知に関する実験や視覚障害者のユーザ調査を基にして,視覚障害者の情報家電及びWeb利用における音声対話の有効性を明らかにする」ことを目的としてスタートした.平成16年度は半年しかないこともあって,平成17年度以降につながる基盤作りに重点が置かれた.具体的には以下の研究が行われ,2005年度3月の電子情報通信学会の研究会などで成果を発表した. 1)Webのアクセシビリティ問題を整理し,コンテンツ制作側,ユーザエージェント,教育などの様々な要素に問題があることがわかった.この中で本研究では,データ表示の困難さとナビゲーションの問題に取り組む. 2)視覚障害者の情報家電利用実態のヒアリング調査を実施し,機器の操作や状態に対するフィードバックがない,ボタンを押すタイミングがわからない,ボタンの配置がわからないなどの問題点があることわかった. 3)視覚障害者の情報入手の困難さを,視覚及び聴覚の知覚,テキスト処理,情報探索の観点から考察した.視覚においても聴覚においても,言語コンテンツを数文字ずつ逐次処理する部分と,別箇所の言語コンテンツにシフトするナビゲーションの仕組みが組み合わさってはじめて効率的な言語コンテンツの利用が可能になるので,聴覚による言語コンテンツ利用におけるナビゲーション問題の重要性が明らかになった. 4)音声対話においては,音声によるコマンド入力の弱点(状態理解容易性,頑健性)を補う必要がある.そこで,音声対話システム開発ツールキットGalateaをベースに,擬人化エージェントの顔画像合成,ICタグリーダや加速度センサーを用いたユーザ状態の取得を用いて音声コマンドの頑健性を補完する方法を検討し,平成17年度に実装を行うための準備を行った. 5)人間同士の気の利いた対話や,うなずきなどの話者へのフィードバックのタイミングを観察することで,視覚障害者用の音声対話システムに必要な機能を考察できる.そのため,対面朗読者と利用者のやり取りの予備観察実験を行った. 6)早口でも聞き取りやすい音声合成の要件や,早口音声合成に対する習熟度を研究するため,晴眼者を被験者とした予備実験を行った.
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